海外旅行解禁後も選ばれる沖縄であるためにーザ・リッツ・カールトン沖縄 総支配人 佐々木孝司氏
コロナ禍で見直した沖縄の魅力
サービスの質を引き上げて新たなリピーターに
佐々木 マリオットグループの一員として、昨年からクリーリネスについては徹底的に対策しました。たとえばお客様への接触機会を減らすため、モバイルチェックインやチェックアウトを導入しました。しかし接触機会の減少に効果的な反面、お客様との対面コミュニケーションをベースとして期待を上回る高品質なサービスを提供するザ・リッツ・カールトンの良さを発揮しにくくなりました。チェックイン時に言葉を交わしてヒントをつかみ、滞在中の過ごし方を提案するといった手法が難しいのです。本当に頭を抱える点です。
ホテル入口でスタッフがお客様の検温をしていますが、検温作業を自動化する意見も出ました。私も悩みましたが待ったをかけました。せめてお迎えの際は接触がほしいと。「36度3分です。ごゆっくりお過ごしください」と言葉を交わしてほしいからです。
プレアライバルのEメールを宿泊客に送っていますが、差出人を一部ですがホテルではなく総支配人に変えました。それによって返信率が高まればお客様について収集できる情報が増やせるからです。
佐々木 客室平均単価は上がりました。コロナ以前から客室平均単価を重視する方針でしたので、コロナ前の好況時も単価を上げて稼働率を落ち着かせ、本当に満足していただけるサービスを提供しようと心掛けてきました。97室全部を埋める必要はない。稼働率は年間平均8割弱でいい。そう考えてきましたからコロナ禍中も単価を下げる方法は取りませんでした。
昨年2021年の予算を作った際には、来年こそは大丈夫だろうと想定しましたが、今年も第4四半期を迎えた段階にきて想定を超える厳しさがあります。ただし稼働率はいずれ戻ります。いま慌てて稼働率を確保するため単価を下げてサービス品質が落ちることは絶対に阻止しなくてはなりません。
佐々木 10月から緊急事態宣言も解け、アルコール提供も再開し通常営業に近づいています。しかし、まだ海外旅行のハードルは高く、海外旅行に行くはずの旅行者が沖縄に来る状況が続くと思われます。そこへ向けて沖縄の魅力をどう発信していくかを考えています。たとえば今年、世界自然遺産に登録された「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」に象徴される沖縄の自然の素晴らしさを体験するプログラムを充実させていきたいと考えています。沖縄はビーチのイメージが強いですが、本州にない自然の魅力が豊富なので積極的に活用したいですね。具体的にはプロフェッショナルのネイチャーガイドの案内で内陸の滝を見に行くプログラムをスタートしました。
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