【ホテル総支配人リレーインタビュー】第9回 ザ・キャピトルホテル 東急総支配人 末吉孝弘氏
安売りに走ればラグジュアリーホテルの未来を失う
待遇改善と地位向上でより良いサービスの実現を
末吉 2023年の春にはインバウンドを含め、2019年を上回ると見ています。しかし来年までの見通しは難しい局面にあります。今年は一旦コロナ禍が下火になり、リベンジトラベル需要が盛り上がると思いますが、それが後につながるかは別問題。リベンジを狙った安売りやGo Toトラベルなど各種補助金の利用によって、消費者の体感価値や体感金額は下がるでしょう。ここで安売りをしてしまえばリピーターにはつながりません。1万5000円で泊まれたホテルが次は4万5000円となれば、利用する気にはならないですよね。「顧客の間口を広げてホテルを経験してもらい、将来のリピーターを開拓する」との考えもありますが、私はそれはないと思っています。なぜなら値段でホテルが選ばれているからです。
末吉 私を信じてここで働いてくれている者たちに私は支えられています。就活生向けの説明会には必ず出席し、「ホテルは総支配人の器を超えたホテルにはならない。だから私も成長していかなくてはならないが、私に共感できる者は一緒に働こう」と呼びかけています。私を信じて何年も付いて来てくれている従業員がいます。私が信念を曲げれば彼らを裏切ってしまうことになります。
末吉 ホテル業界は待遇を改善しなければなりません。待遇を改善し給料を上昇させ、社会的地位を上げていくべきです。観光はもはや国の基幹産業です。私たちの仕事が日本を支えているのです。ホテルに勤める者が年に何回かは自分の金でラグジュアリーホテルに宿泊できる環境を作っていきたい。もっと我々の価値を社会に認めさせ、きっちり収益を上げ、従業員に還元できる仕組み作りを業界の皆で実現していきたいと思います。
地位も待遇も上げ、良い物を見、体験したスタッフによる、より素晴らしいサービスが実現できれば、ラグジュアリートラベラーに選ばれ、収益も上がり、皆が豊かになれるはずです。安売りに走らず頑張っていきましょう。
末吉 東京ステーションホテル常務取締役総支配人の藤崎斉さんです。根っからのホテルマンである藤崎さんが、企業文化も体質も全く異なる企業体の中でホテルを任されているわけですから、様々な困難や課題に直面したはずです。それでも革新的な試みを成功させ、リニューアルをやり遂げ、新たなブランドを確立するに至りました。素晴らしいリーダーだと尊敬しています。そのリーダーシップの源泉は何なのか、信念を貫く秘訣は何なのか伺ってみたいです。