「宿泊業界に足りないのはマネジメントのプロ」マネージャー・経営者の育成に取り組むー宿屋大学代表 近藤寛和氏

コロナ禍で高まる人材育成へ投資
ミレニアル世代の挑戦にも注目

-現場のオペレーション要員に関してはどうお考えですか。

近藤 宿泊産業は必死にローコストオペレーションを進め、生産性向上を図ってきました。スタッフがいなくても宿泊客自身がオペレーションする形式が増えています。そこでは現場の人手不足は深刻化しないと思います。先日、奥飛騨へ旅行し無人旅館に泊まりました。ネット予約した旅館を訪れパスコードで部屋に入り、チェックアウトも人手を介しません。トヨタの1人乗り自動車のレンタルも無人で手続き完了。宿泊業はDXで大きく変化していきます。

-今月発刊予定の書籍「惚れるホテルを創る 愛されるホテリエたち」は、どのような思いで書かれましたか。

近藤 コロナ禍でホテルの主力商品である「宿泊」が奪われ、それに代わる価値創造が必要だと考えていたときに、若手のホテリエと会い、「ホテルは寝床ではない。ライフスタイルを提案し、豊かさを提案する場所であるべきで、それをやる余白は沢山ある」という思いを聞きました。既成概念に囚われ柔軟な発想ができずに頭を抱える経営者が多いなか、いま20代から30代のミレニアル世代のホテリエが、次々と新しい挑戦を始めています。彼らの存在や経営哲学、活躍ぶりを紹介すれば業界に前向きの刺激を与えられると考えて書籍化を決めました。

-近藤代表から見て、観光産業の従事者が是非訪問すべき宿泊施設、勉強になる宿泊施設があれば教えてください。

近藤 いいホテル、勉強になる旅館ということでいうと様々なモノサシで測ることによって変わってくると思います。「体験価値」をユニークに創造しているというモノサシで考えて、次の4つを挙げたいと思います。

 飛騨高山の「hotel around TAKAYAMA」は、ホテルが旅行者と地域を結ぶハブとして機能する回遊拠点型ホテルとして興味深いです。東京立川の「SORANO HOTEL」は「ウェルビーイング・ショートトリップ」という新発想のホテルです。顔認証によるセルフチェックインやタブレットによるチェックアウトなどDXを駆使した最先端ホテルとして面白いのは東京渋谷の「sequence MIYASHITA PARK」です。反対に伊豆稲取温泉の「浜の湯」は、人の魅力を前面に打ち出し「仲居の接客で楽しませる」というコンセプトが勉強になります。観光産業に従事する方々にも参考になる事柄があるはずなので、機会があれば訪問してほしいですね。

-トラベルビジョンの読者にメッセージをお願いいたします。

近藤 コロナ禍後に観光産業はもっともっと面白くなるし、ボリュームも増すでしょう。DXの活用で従来は想像できなかった宿泊ビジネスも生まれるはずです。面白くなるのは間違いありません。ホテルは単なる宿泊場所ではなく、顧客の体験価値を創造する場所になっていくでしょう。豊かさの提案も含め、ホテルの存在意義やホテルへの注目度はもっと高まっていくと信じています。

-ありがとうございました。