観光で日本を支える気概を持った人材を育てたいーせとうち観光専門職短期大学 学長 青木義英氏

観光分野を学んだ人が業界で活躍し続けるための専門職短期大学
より本物に近いインターンシップでミスマッチを回避

-カリキュラムにはどのような特徴がありますか。

青木 3年制の短期大学ですが、卒業までに全部で15週間、つまり4ヶ月間近い企業実習を行います。インターンシップを取り入れている観光系の学部は少なくありませんが、企業にしてみればインターンシップ生はいわばお客さん扱いで、学生は仕事を表面的に知るだけです。しかし本校の企業実習は実際に仕事を任され、時には叱られ、より本物に近い仕事体験ができます。それを実現するため、実習前には担当教授が学生に対して企業が実習生に何を求めているのかをしっかり学ばせます。また実習後にも「どうだった?」と声掛けし、学校での学びと仕事現場における現実との違いを整理しフォローします。

 一方で受け入れ企業に対しては「学生をアルバイトとして仕事させるのではなく、従業員として求めるレベルで指導、教育して欲しい」とお願いします。卒業後に実習先企業で雇用してもいいと考えるような人材を育てていきたいと考えています。

-企業実習で実際の仕事に触れれば就職のミスマッチは減少しそうですね。

青木 ミスマッチの大きな要因は、「A社に入りたい」といった思いだけで志望してしまうことです。希望するA社に入っても、例えば経理部に配属されれば、仕事の内容はA社もB社もほぼ変わらない。A社であるべき理由はなくなり、「思い描いていたものと何か違う」と悩み離職に繋がってしまう、というケースは現実に起こり得ます。だから学生に求めるのは、現実の事態に反応できること。与えられた事柄、環境にしっかり反応できる能力が必要です。

 自分が何をやりたいのかしっかり理解したうえで、企業に入ったら自分が何をしたいのかを相手に伝えられる能力を身に付けてほしい。ある意味、これが人間力というものかもしれません。

-コロナ禍中の開学になりましたが、学生募集などへの影響は。

青木 もちろん大きな影響がありました。観光関連企業はコロナ禍により生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされており、本学も厳しい状況に直面しており、まさしくコロナとの戦いの真っただ中にいると感じています。

-観光産業の各社はレイオフして何とか生き延びている状態ですから、需要回復時には確実に人手不足になります。今後学生には大きく門戸が開かれるのではないでしょうか。

青木 そうなることを願っています。コロナに対して完全に抑え込もうとすべきなのか、共存していくべきなのか、それは分かりませんが、新しいリスクマネジメントの重要性が高まっています。私たちはリスクの中で生きているのだと学生たちには学んでほしいです。

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