JATA「ウィズ・ポストコロナに向けた訪日」ウェビナー開催、再開ロードマップをつくる時期
来年以降の大規模イベントを復活の機会に
アウトバウンドとインバウンドは表裏一体
日本旅行業協会(JATA)は、会員旅行会社社員及びツアーオペレーター品質認証会社社員向けに「ウイズ・ポストコロナの訪日旅行に向けて」をテーマとしてウェビナーを開催した。ウェビナーでは、地方自治体の新型コロナ対策として、山梨県の「やまなしグリーンゾーン認証制度」と沖縄県の「OKINAWA BLUE POWERプロジェクト」について説明が行われたほか、ポストコロナの旅のキーワードとして「農泊」を取り上げ、事業者による取り組み事例が紹介された。
開催に先立って挨拶したJATA副会長・訪日旅行推進委員会委員長の小谷野悦光氏は、インバウンド市場は昨年から厳しい状況が続き、まだ見通しがつかない状況だが、「日本でもワクチン接種が進み、政府も『ワクチン・検査パッケージ』の活用について国民的議論を呼びかけるなど、将来に向けて明るい兆しが出てきた」と評価した。
また、無事に終了した東京オリパラに触れて、「世界各国のマスコミが日本と東京を大きく取り上げ、選手からもSNSなどで日本の食、風景、ボランティアのおもてなしなどが好意的に発信された。各調査からも依然として訪日意欲は高い」とコメント。来年開催される関西での「ワールドマスターズゲーム」、福岡での「世界水泳選手権」、そして2025年の「大阪・関西万博」と大規模イベントが続くことから、これらを目標にインバウンド復活を呼びかけた。
東洋大越智教授「ワクチン接種証明の活用で新たな段階に」
基調講演では、東洋大学教授でJATA参与の越智良典氏が「国際交流、グローバリゼーションはどうなっていくのか?Withコロナの課題とリスクマネージメント」をテーマに今後の国際交流を展望した。
越智氏はまず、コロナ禍での国の施策について振り返り、「インバウンドの成長が、国の成長戦略のなかで大きな成果を挙げたからこそ、観光産業が支援されている」とし、そのひとつとして昨年の「Go Toトラベル」を挙げた。Go Toトラベル利用者は昨年7月から12月で約8500万人泊にのぼり、世界に類を見ない「観光史上最大の作戦」(越智氏)になったと評価した。
また、世界各国でも同様のキャンペーンはおこなわれているが、日本では「旅行会社および宿泊施設の7割が感染防止ガイドラインに参加し、旅行者も『新しい旅のエチケット』を遵守するなど、観光振興と並行して感染防止の普及啓蒙活動をおこなったこと」と説明。そのうえで、経済を回していく前提でデータに基づいた感染対策を進めていく必要性を主張した。
「ワクチン接種と検査のパッケージで国内と海外をつなげていくことを考えるスタートラインに立っている」と現状を分析し、出口戦略として、国内とインバウンドでは「感染対策ガイドラインの見直しと受け入れ体制の整備」、海外では「出入国規制の緩和、航空座席の確保、海外との相互理解」を進めていくべきと提言した。
具体的には、海外とインバウンドは表裏一体として、まず隔離期間の14日間から10日間の短縮あるいは撤廃、日本のワクチン接種証明承認国の増加、デジタルワクチンパスポートの活用を挙げたほか、ワクチン接種率によるリスク国の色分けの仕組みを提案した。
隔離期間の短縮については、社会経済活動の再開に向けてJATAのほか経団連も要望。日本のワクチン接種証明については9月3日現在で33カ国・地域が認めているが、まだ英国など認めていない国・地域も多い。リスク国の色分けについては、たとえば海外の事例をもとに、ワクチン接種率50%以上、新規死亡者数30人以下は「グリーン」とすることを提言した。
一方、国内旅行あるいは訪日の受入態勢では、ワクチン接種証明やPCR検査証明の共通化のほか、「地元が旅行者を歓迎する体制づくりが大切になってくる」との考えを示した。また、抗原検査の活用など地元医療機関の協力体制づくりも求められるとした。そのなかで、JATAは今年4月に「『新』感染対策モニターツアー」を実施し、団体ツアーの検証やワクチン接種の進捗に伴うGo Toトラベル再開の条件などを検討したことを紹介した。
このほか、越智氏はポストコロナの旅行動向についても説明した。安心安全が最大の関心事になることから、ポストコロナでも旅行会社や観光地は感染防止対策を徹底する必要があるほか、感染状況の具体的な情報を提供していくことが重要と強調。さらに、食や宿泊での質の向上、少人数テーマツアーへのシフト、FITやSITへの対応、余裕のある旅程作成などが求められるとの考えを示した。
JATA海外旅行推進部では、海外旅行再開に向けたロードマップを作成しているが、越智氏は「訪日でもロードマップをつくる段階に来ている」と話し、ワクチン接種が世界的に進むなか、ワクチン証明書の活用で、訪日市場の再開も新たなステージに入りつつあるとの見解を示した。