コロナで退職した業界人に観光産業での再就職を-大阪観光大学 観光学部教授 小野田金司氏
産学連携の「ニューノーマルな観光人材育成プログラム」
座学とフィールドワークで最新のスキルを身につける
大阪観光大学では、コロナの影響で退職を余儀なくされた観光産業従事者の再就職を支援するリカレント教育プロジェクトの受講者を募集している。産学連携で同プロジェクトを進める小野田金司教授は、自らも長年勤めた旅行会社を休職して学び直しをした経験から、「社会人としてのキャリアに関係なく、1度参加してみてほしい」という。プロジェクトの狙いやコースの詳細について小野田氏に聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
小野田金司氏(以下敬称略) 1957年に和歌山市で生まれ、大学卒業後は近畿日本ツーリストの和歌山支店に20年余り勤務して、修学旅行から国内外の一般の旅行まで一通りの業務を経験しました。そのなかで1999年に開催された「南紀熊野体験博」に関わる機会があったのですが、当時はまだ熊野古道の名が広く知られていなかったため、多くの人に訪れてもらえるよう様々な仕掛けを工夫しました。
この仕事を通して「観光はこれから変わるな」と思い、学び直しをしようと休職して、和歌山大学の大学院に入学しました。その間に友人が東京でベンチャービジネスを始め、それを手伝うためにそのまま近畿日本ツーリストを退職。4年ほど旅行業とは関わりのない生涯学習事業やイベント関係のプロデュースを手掛けました。その後、2007年に新設される神戸夙川学院大学という観光専門の大学にスカウトされ、大学教員になりました。実務家教員として神戸の着地型観光を手掛けたり、「COMING KOBE」というチャリティーロックフェスティバルを開催するなどの仕掛けも行ったのですが、リーマンショックの影響で2015年に大学が廃止に。学生と教員はそのまま神戸山手大学に移りました。
その頃からインバウンドが成長し始めたことを受け、文部科学省の社会人教育プログラムや観光庁のプログラムにも関わるようになりました。今回のリカレント教育プロジェクト「ニューノーマルな観光人材育成プログラム」は、当時の経験や繋がりがベースになっています。その後2020年には神戸山手大学も廃止されて関西国際大学に学部譲渡されることになり、私はそれを機に現在の大阪観光大学に移りました。
小野田 現在縁があって青森の十和田奥入瀬観光機構の理事長を務めており、和歌山の那智勝浦観光機構もお手伝いさせてもらっているのですが、地域DMOの一番の苦労は人材確保だと思っています。自治体からの出向者と旅行会社からの出向者、そしてプロパーの職員という、もともとの素地が違う人達が一緒に仕事をしているわけで、報酬体系も異なり、なかなか上手く機能しません。ですが日本版DMOが始まって4年ほど経ち、最近では出向者が元の職場に戻るようになってきました。こういうときに良い人材が来てくれたら、というのが最初の思いでした。
地方に住むと都会のように高い家賃もかかりませんし、コロナ禍で価値観や働き方も変わり、地方に住むことの魅力はより増してきています。また、地方には1人、2人の力で地域の観光を変えられるという魅力もあります。集団で地方に「疎開」して2、3年頑張れば、万博もあるしIRも出てくる、エアラインもまた飛び始める。せっかく観光業界で働いた経験やスキルのある人が違う業界へ去っていくことは、観光業界にとっては大打撃です。今後必ずやってくる回復期に向けて観光人材を確保したいという意図でこのプログラムを始めました。
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