【コラム】刺青とインバウンド

  • 2021年8月20日

 オリンピックを見ていて競技以外で目についたことがあります。それは、刺青(入れ墨・タトゥー)をされている選手の多さ。

 日本ではなんとなくネガティブな印象が有り、実際、刺青をしていると利用が制限される温泉やプール、スポーツジム等がたくさん有りますね。

 少し調べてみると、我が国における刺青は縄文・弥生時代から存在したとも言われており、その時代においては神聖なものだったようです。江戸時代になると鳶や飛脚が「粋」の為に入れる、並行して犯罪者に墨刑として入れられていたようです。戦後になるといわゆるヤクザの象徴として認識されるようになったものの、刺青を入れたヤクザが主人公の映画が人気を博し「任侠」「男らしさ」と言った好意的な捉え方をする人も少なからずいたようです。しかし「暴力団対策法」が公布された頃から刺青=暴力団という認識が定着、一方では刺青とは一線を画すファッションとして入れる若者が増え、両者の間に明確な線引が出来ないのが今の状況、大まかに言うとこのような推移かと思います。

 海外でも日本と同じようにどちらかと言うとネガティブに捉えられる国も少なく無いようですが、アメリカやイギリスでは10代後半から40代前半までの3~4割がタトゥーを入れているとの調査結果も出ているようで、まさに国により事情は様々なようです。

 前置きが長くなりましたが、異なる価値観を含む多様性の尊重はコロナ後のインバウンド復活に欠かせない視点かと思います。そろそろ、刺青の有無による施設の利用制限を見直すべきなのでは無いでしょうか。

 そもそも、今どきの暴力団構成員の大半が入れ墨を入れているわけでは無いでしょうし(良くは知りませんが…)、日本を訪れる外国人観光客の内、タトゥーをしている人が非合法組織の構成員である確率が高いとは思えません。これまでそれが普通だったから、一部の声の大きい人に配慮(迎合?)してと言った理由で変えないことを選択していると、外国人観光客を呼び込みたい「競合国」に遅れをとってしまいそうです。ただでさえ、観光再開で出遅れているのですから…。

※とは言え、施設側にはまた違った事情や考え方があると思います。意見お待ちしています。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​