公認会計士が教える会計知識vol.5 固定資産の減損ーゼロベース代表 渡邊勇教氏寄稿
固定資産の減損
公認会計士の渡邊勇教が、トラベルビジョン読者のみなさんに、ビジネスパーソンとして知っておいて頂きたい会計に関する基礎知識を連載でお伝えする本コラム。5回目の今回は、第3回、第4回の「固定資産と減価償却」に続き、「固定資産の減損」をテーマにご紹介いたします。
固定資産の減損とは
減損会計とは、投資した固定資産による収益が期待以下だった場合、もしくは時価が著しく下落した場合に、投資の失敗を損益計算書に反映することをいいます。減損をした場合、損益計算書の特別損失の項目に「減損損失」という項目で表示されます。また、個別注記表に減損損失に関する詳細(どういった資産をどういう理由で減損したのか)が記載されることとなります。
減損会計の目的
減損会計の目的は、投資家や債権者といった利害関係者へ「投資の失敗」の事実をタイムリーに伝達する点にあります。潜在的な損失を早期に開示し、より正確な現状を示すために必要な会計処理になります。
大企業は減損損失の計上が必要であることは当然のことながら、中小企業においてもその会計基準が定められている「中小企業の会計に関する指針」においても減損損失の計上は必須とされています。
そもそも固定資産の価値とはどう判断されるのか
固定資産の価値を考える時に「資産性の有無」が重要になります。ここで資産性がある状態とは、価値がある状態をいいます。では、固定資産の価値とは何で決まるのでしょうか。それは、大きく分けて2つの要素で決定しています。1つは、市場での販売価格。そして2つ目は、その資産を活用することで得られる(であろう)収益の現在価値に基づく資産価値です。
1つ目は、市場での流通価格がそれになります。中古車がわかりやすいのではないでしょうか。需要が高ければ高い価格がつき、需要がなければ安い価格となる。これが1つ目の価値の決定理由です。
もう1つは「収益の現在価値に基づく資産価値」です。これは、資産を活用して資産の価格以上の収益を上げられることを意味しています。例えば、工場を1億円かけて建設したとします。この工場を1億円で建設した理由は、数年かけて1億円以上の売上が見込めると踏んだからと考えるのが通常です。言い換えると、この1億円の工場の価値は「1億円以上の価値(=収益)を生む資産」となり、1億円の価値はある、という結論になります。
なお、いずれのケースも時間とともに価値が減少していくため、減価償却は行います。
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