「銀行はこう使え!」-メガバンク元営業担当が本気のアドバイス Final
銀行マンのセカンドキャリア、これからの銀行のあり方
某メガバンクで新卒から6年法人営業に従事して現在は旅行業界に携わる筆者が、年商1億に満たない会社から東証一部上場の企業まで延べ100社以上を担当してきた経験を元に、皆様の「知りたい」にお答えする本企画。最終回は銀行員の再就職と銀行のこれからについてお話ししたいと思います。(過去記事はこちら vol.6 粉飾決算の手口/vol.5 審査の裏側/vol.4 与信審査/vol.3 銀行活用法/vol.2 銀行員の仕事現場/第vol.1 銀行員の実態)
皆さんの周りにも銀行出身者が財務や経理ラインの管理者として在籍しているケースがあるのではないでしょうか。意外と知られていない出向を含めた銀行員のセカンドキャリアについてご紹介するとともに、今後の銀行のあり方について考えていきます。
銀行員の出向は片道切符?
「銀行員の出向」と聞くと、昔からネガティブなイメージがあるかと思います。銀行員の銀行員としての寿命は短く、メガバンクであれば50歳前後で外部企業やグループ内企業に出向します。所謂「片道切符」と呼ばれるもので、一定期間後には転籍となり、引退までその企業で働くことになります。一方で見識や人脈を広げる目的で若手や中堅を出向させるケースもあります。この場合は銀行に戻る前提で、出向する側も会社からの期待を背負っているケースが多いでしょう。
一般的に銀行員の出向と言うと前者の片道切符が想起されます。これは転職しない限り誰にでも訪れる未来です。そう考えると、銀行員は遅かれ早かれキャリアのどこかで必ず転職がある職業とも言えます。
出向には大きく2つのパターンがあり、取引のある外部企業に行くケースと、グループ内企業に行くケースに分かれます。銀行員としての最終キャリアによって受入れ先の立場も変わり、経営層として出向することもあれば現場に近い立場で出向することもあります。
外部企業に行く場合、総じて財務や経理を所管するラインに配置されます。銀行員の多くは営業がメインであり、一般企業の経理で行う伝票の整理や決算書作成といった業務はまず経験したことがありません。そう考えると少し不思議な配置ですが、決算書を読んだり分析したりすることに関してはプロですから、ゴールを知っている分取り組みやすいというのが要因の1つだと思います。また銀行の手の内を知っており交渉を有利に進められる点も強みでしょう。銀行は転勤が多く職場環境が約3年周期で大きく変化するので、環境適応力はかなり磨かれます。一方でこれまでにもお伝えしたように独特な文化や考え方、ある意味閉鎖的な社風もあり、外部企業で適応できるかはどうかはまさにその人次第となります。
その点、グループ内企業に出向する場合はそのような障壁が小さいかもしれません。但し、グループ内企業への出向は得てして古巣の支店を巡り、銀行員向けにセールスすることを求められます(保険会社やリース会社、不動産会社に多い)。元部下に頭を下げてお願いし、煙たがられながら取引先に同伴させてもらうことも多く、人によっては耐えられない営業だと言えます。
どちらのパターンを選ぶかは人それぞれですが、いずれにせよ銀行で約30年築き上げてきた地位は50歳前後にリセットされる運命にあるのです。余談ですが、近年は人員・コスト削減の影響もあり、人件費が高い人材ほどシビアな人事が行われている印象を受けます。長く銀行員でいるためには、誰よりも出世するか、もしくは周りの評価を気にせず出世しないという極端な2択となっている気がします。
次ページ >>> 銀行の未来