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「日本は重要な存在」業界と協力して観光の復活へー駐日スリランカ大使 サンジーヴ・グナセーカラ氏

美しい自然と豊かな文化、コロナ後は教育旅行にも注力

 その自然の豊かさや美しさから「インド洋の宝石」とも呼ばれるスリランカ。観光産業が盛んで、今年1月には観光客の受け入れを再開したが、コロナ感染者数の増加に伴い再びロックダウンするなど状況は一進一退を繰り返している。個人旅行者の多い日本は重要な存在だという駐日大使、サンジーヴ・グナセーカラ氏に、同国の観光の現状や今後の日本での活動について聞いた。

サンジーヴ・グナセーカラ駐日スリランカ大使
-はじめにスリランカという国について教えてください。

サンジーヴ・グナセーカラ氏(以下敬称略) スリランカはインドの南にある島で、豊かな文化と生物の多様性、そしてホスピタリティにあふれる国民性が特徴です。国としては約3000年の歴史を持ち、仏陀も3度訪れたと言われています。回ろうと思えば主要観光地を2、3日で回れるコンパクトさも魅力です。

 スリランカに8つある世界遺産のうちの1つで「The Eighth Wonder of the World(世界の8つ目の不思議)」とも言われるシギリヤロックは、5世紀後半にその頂上に王宮が建てられました。内部には王が沐浴をしたプールや王座、天然の素材で描かれたフレスコ画「シギリヤ・レディ」などが残っています。

 四方を海に囲まれたスリランカには美しいビーチが多数あり、サーファーにも人気です。世界でも珍しいホエールウォッチングとイルカウォッチングが同時にできる場所でもあります。国土の10%以上を国立公園が占めており、サファリでの象との遭遇率は世界一。また、島の中央部には丘陵地帯があり、斜面には美しい茶畑が広がっています。

 もう1つ忘れてはならないのがアーユルヴェーダの国であることです。アーユルヴェーダはインド発祥の医学で、スリランカで独自の進化を遂げました。専門の大学や研究所もあります。アーユルヴェーダの施設ではドクターの指導のもと、化学的な薬品を使わない天然由来の原料での施術を提供しています。

 そして一番は人です。日本とスリランカには仏教など多くの共通点がありますが、なかでも親切でホスピタリティにあふれ、相手のことを大切する文化はスリランカの人々の考えにも通じます。スリランカには分かち合う精神が根付いていて、私も日本に来てそれを同じように感じています。その共通点が2つの国を繋いでいるのではないかと思っています。

-ご自身のご紹介もお願いいたします。

グナセーカラ 私はコロンボで生まれ、奨学金を得てスリランカの大学に入った後、アメリカの大学へ進学しました。大学では国際関係と経済を学び、そのままアメリカでキャリアを重ね、2001年に起業。ビジネスの傍ら、スマトラ沖地震の被災者への家屋の建造やロサンゼルスでの仏教寺院の建立など、国への恩返しとなるような社会的活動にも力を注いできました。

 現在は事業からは退き、今年1月に駐日スリランカ大使として着任しました。実は私は駐日大使になることを一番に望んでいたのですが、それは日本の歴史や文化を学び、両者の関係は利害を抜きにした人間同士のつながりだと感じでいたからです。これまでの経験を活かして貿易の促進や関係の再構築に努め、両国の関係性を更に高いレベルに引き上げていきたいと考えています。

-スリランカでは観光産業をはじめとするサービス業の占める比率が高いと思いますが、コロナの影響はいかがでしょうか。

グナセーカラ スリランカは人口約2100万人で、そのうち300万人が直接的または間接的に観光産業に従事しています。国にとって重要な産業ですのでさまざまな支援プログラムを実施しており、例えばホテルなどの宿泊施設では支払いの延期や金利の引き下げなどを行っています。また観光産業に限らず、個人には月5000ルピーを上限に収入に応じて給付金を支給しています。

 コロナ前は1ヶ月に約20万人、年間では2300万人の観光客を受け入れていましたが、現在はほぼストップしています。今年2月、3月は月に2000名ほどという状況で、非常に大きな喪失です。

 1月21日より国境は開けているものの、現在は入国後14日間の隔離が必要な状態です(編集部注:6月上旬時点)。ワクチン接種を進め、3ヶ月以内に入国の制限を緩和したいと考えています。具体的にはワクチン接種済みの場合、入国後は隔離施設へ移動してPCR検査を実施し、陰性なら移動を認め、3日目に2回目のPCR検査を受けるという体制です。

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