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復活の鍵は「文化観光」、アートと観光で街づくりを目指す-芸術文化観光専門職大学学長 平田オリザ氏

観光やエンターテイメントは人間の生きる楽しみ
業界はポストコロナに向けて連帯を

 今年4月、日本で初めて芸術、文化、観光を実践的に学ぶ公立大学として、芸術文化観光専門職大学が兵庫県豊岡市に開設された。学長を務めるのは国内外で劇作家・演出家として活躍する平田オリザ氏。過去には国交省成長戦略会議の観光部会で座長も務めた「日本で一番観光に詳しい劇作家」に、芸術・文化と観光の双方を学ぶ意図や目指す大学像、思い描く地域と文化観光のあり方を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

芸術文化観光専門職大学学長の平田オリザ氏。インタビューはオンラインで実施した。
-まずは芸術文化観光専門職大学の目的と特徴を教えてください。

平田オリザ氏(以下敬称略) 本学のある豊岡市は兵庫県北部の但馬圏域に属しています。面積は東京23区と同程度で人口は8万人弱、但馬圏域で見ると面積は東京都と同程度、人口は約16万人です。但馬にはこれまで4年制大学がなく、大学の誘致は地域の方の悲願でした。

 但馬の主産業は観光ですが、観光のみで学生を募集するのは難しいため、そこにアートを結び付け、街づくりや地域振興、ビジネスとの架け橋となるような大学を構想しました。日本にはまだ演劇やダンスの実技が本格的に学べる国公立大学がなかったので、それは演劇界の悲願でもありました。本学はさまざまな方の願いが重なってできた大学だと言えます。この少子化時代に学生が来るのかという声も聞かれましたが、蓋を開けてみると入試の倍率は平均7.8倍、AO入試については11倍と非常に高く、全国から優秀な学生が集まってくれました。「アートと観光で街づくり」というコンセプトが響いたのではないかと思っています。

 本学は専門職大学であり、専門学校ではありません。ホテルでいえばフロントマンではなくコンシェルジュの育成を目指しています。一流ホテルのコンシェルジュは歴史学から文化人類学まで幅広い教養を持ち、あらゆるお客様のニーズに応えて旅行プランを提示できます。でもそれだけではなく、例えばニューヨークやロンドンのコンシェルジュは電話1本で人気の公演のチケットを押さえられるネットワークも持っていて、主要な演目や美術展などには当然足を運んでいます。観光学は究極のリベラルアーツ、教養だと思っています。高い教養を持った観光人材を、なかでも特にアートに重点を置いて育成するのが目的の1つです。

 また、コロナ以前日本は主に東アジアからの訪日客で潤ってきましたが、コロナ後この方たちに再び旅行先として選んでもらうためには、スポーツや食も含めたコンテンツ、広い意味で「文化観光」と呼ばれるものが非常に大切になります。ですが、日本には家族で楽しめるミュージカルやご夫婦がカクテルを飲みながらジャズを聞ける場所など、安心して楽しめるナイトアミューズメントがまだまだ足りていない。そこで芸術文化観光に特化して教えようというのが本学のもう1つの狙いです。

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