若手の観光リーダー育成で新プロジェクト-TABIPPO代表取締役の清水直哉氏

  • 2021年6月4日

旅を日本に根付く文化に
他業種からの若手参入で業界に新たな風を

-全員が権限を持つ「自律分散型」の組織をめざしていると伺っていますが、詳細を教えてください

インタビューはコワーキングエリア「co-ba ebisu」にて実施 清水 変化の大きい時代の中で、どういう組織であれば会社のビジョンが達成できるかをずっと考えた結果、「自律分散型」の組織が適していると感じました。僕自身、人をコントロールすることはあまり好きではありませんし、変化に素早く対応し、意思決定を早くするためには管理やコントロールは重要でないと思います。人をエンパワーメントするのは各人の志や想い。「旅を広めたい」気持ちがあるスタッフという前提があるならば、その人をエンパワーメントしていけばビジョンは達成できると思っています。

-これからの観光業はどうあるべきだとお考えですか

清水 なかなか旅行にお金を使わないという理由でこれまで後回しにされてきた、20代・30代の若者向けの施策をコロナ禍の今こそ取り組むべきです。シニア層がそう簡単に旅行に行けないとき、その層の優先度が上がってきたと感じています。次世代を作るのは次世代なので、今一度若者と向き合わなければなりません。10年から20年前に取り組んでこなかったからこそ、今大変な状況になっているのだと思います。

 また、そもそも旅の価値が見直されるべきだと思っています。僕らも10年間旅を広めようと取り組んできましたが、コロナ前のパスポート取得率は23%強、出国率も約14%で、前から全然増えていません。50年後に数字が50%になり、その理由の1つにTABIPPOという名前が出ればと思って事業を進めていますが、10年取り組んでも、なかなか数字は増えませんでした。

 どうすれば良いかを改めて考えたとき、旅の価値の伝え方を今までと変えていかなければならないと思いました。今まで旅行や観光は単なる娯楽として扱われてきた歴史がありますが、今の若者には娯楽がたくさんあります。YouTubeやTikTokは無料で豊富なコンテンツを楽しめますし、Netflixは月額990円からで映画鑑賞ができます。それらと比べると旅はとてもコストパフォーマンスが悪いですし、若者は旅行に行かず他のコンテンツに流れてしまいます。

 旅好きが旅に感じる魅力は、シンプルな楽しさだけではありません。旅は中長期的に人生を変え、キャリアを豊かにしてくれるものです。不便ですが人生にとっての得、「不便益」がたくさんあります。そういう面をアピールし、今一度、旅行業界全体で旅のあり方を考えなければと思います。