これからの旅行会社に必要な3つの考え方とは?-RT Collection 柴田真人氏寄稿

  • 2021年5月19日

 続いて、「(2)バックキャスティング思考」と「(3)未来情報を知る」について説明します。私自身、旅行業はソリューション事業を兼ねていると思っていて、旅行中の観光地でのトラブルや問題を未然に防ぐためのサービスや取り組みをよく考えていました。この考え方は「フォアキャスティング」といって、現状をもとにした考え方になります。そのため、今直面している問題を解決しながら、現在の延長線上にある未来に向かって進んでいきます。

 もっとわかりやすい身近な例を挙げると「頭が痛い⇒バファリンを飲む」や「電車じゃ間に合わない⇒タクシーを使う」などもフォアキャスティングの考え方です。そのため、フォアキャスティングでは主に改善ということになります。

 もう1つの考え方として、「バックキャスティング」という考え方があります。バックキャスティングは現在の延長線上を考えるのではなく、未来のあるべき姿や未来の理想の姿を描き、今から取り組めることを考えていく方法です。コロナの影響で今でさえ大変な時に未来のことなんて考えてられるか!と思うかもしれませんが、アフターコロナに必要な考え方の1つになり、個人としてもこの考え方を持っておくとこれから必ず役に立ちます。

 バックキャスティングでは未来の理想の姿を実現するために革新的なアイデアや施策が必要になりますが、スタート時は大多数の人が反対をするかもしれません。その時に大事なことは会社の理念や価値観です。長期的に取り組んでいけるかどうかは、ぶれない理念や価値観次第です。

 バックキャスティングの考え方をする上でもう1つ大事なことは「未来情報」です。未来情報について情報収集をしている人は意外と少ないのではないかと思います。シンクタンクが未来年表を発表しており、その未来年表を読むとこの先どのような未来が待っているのかがわかります。是非見てみてください。例えば、観光業に関連しそうな未来情報をいくつか書いてみます。

2022年中国が独自の宇宙ステーションを完成
ドローンの有人地帯での荷物配送サービスが可能になる
2023年日本の4人に1人が65歳以上の高齢者になる
100歳以上の高齢者が全国で10万人を超える
全国の空家が1,394万戸、空家率が21%に達する
世界人口が80億人突破
スウェーデンが完全キャッシュレス社会になる
2024年小学校でデジタル化をはじめとする改定教科書使用開始
インドネシア首都移転
フランスのパリ市がディーゼル車の乗り入れを禁止する
2025年日本の高齢者人口が3,500万人でピークに達する
東京都の人口が1,423万人でピークになる
国内のキャッシュレス決済が80%に高まる
無人自動走行バス・タクシーを活用した新サービスの事業化
2026年サクラダファミリア完成
2028年インドの人口が中国を抜き世界1位になる
2029年国内の生産年齢人口(15歳~64歳)が7,000万人を割る
2030年訪日旅行者数6,000万人
AIによる職業代替が進み、従業者が735万人減少
インドの生産年齢人口(15歳~64歳)が中国を抜き世界1位になる
通信規格6Gの導入スタート

 このようにポジティブな未来もあれば、ネガティブな未来もあります。それらの未来情報からどういったあるべき未来の姿や理想の未来の姿を描けるか、そして、その実現に今からどういった取り組みをしていくことができるかを考えていきます。その際、(1)で述べたリソースをいくつか掛け合わせてアイデアを出していくことが大事になります。

 業界内では「量から質」「サステナブル」「SDGs」などのキーワードをたくさん耳にしますが、この「他の業界のリソースと掛け合わせる」「バックキャスティング思考」「未来情報を知る」の3つの考え方を持っておけば、新しい企画を考える際や新規事業を話し合う際、さらには事業転換を考える際にとても役に立つでしょう。

参考資料:
野村総合研究所「NRI未来年表2021~2100」
博報堂生活総合研究所「未来年表」

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。