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【香港現地レポート】コロナは落ち着きを見せるも、観光産業存続の危機!?

中国人観光客への依存
コロナは市中感染の抑制に成功

 2019年の香港民主化デモ活動以来、香港の観光産業は悪化の一途をたどっています。いつも賑やかな銅鑼湾はしんと静かで、店は活気を失いました。観光関連企業の破産や事業者の失業のニュース、この暗い現実は香港の街を覆う暗い雲のように街に立ち込めています。しかし最近になって香港にも良いニュースがありました。2021年3月27日に香港で新たに確認された6例のコロナ新規感染者はすべて海外から輸入性であり、約4か月ぶりに市中感染がゼロになりました。更にワクチン接種の効果により、香港の流行状況は大幅に緩和されました。

 香港の観光産業に内在する危機は香港民主化デモ以前から徐々に進行していました。観光客からのニーズの減少と周辺の競合都市により、以前のような人気を失い、国際都市としての香港の地位はますます危うくなっています。新しい観光プロジェクトの効果は平凡であり、多くの人々が香港の観光産業の将来を心配しています。中国との関係を再構築すれば以前のような活気ある姿に戻ることができるのでしょうか。

※この記事は4月19日の情報を基に執筆しています。
※前回の中国現地レポートはこちら

静かな商店街

新型コロナウイルス流行下の香港観光

 香港の観光産業はコロナの流行で特に大きな損失を被りました。香港政府観光局によると、2019年香港への訪問者数は5,591万人、2018年の6,515万人から大きく減少しました。さらに2020年2月以降、訪問者数は13か月連続前年比90%以上減少しています。

 キャセイパシフィック航空(CX)の2020年の年次報告書によると、総乗客数は463万人で、前年比86.9%も減少しました。また、搭乗率はわずか58%、前年比24.3%減となりました。2020年の建国記念日(10月1日から7日)の間に、中国本土から香港に入ったのはたったの979人だけでした。

 最近は多くの香港人が規制を遵守しマスクを着用し、予防措置を講じた上で週末に観光(国内旅行)に出掛けています。しかしながら、香港市民のほとんどが自分自身で手配をするため、香港の旅行代理店の業績の回復には役立っていません。

香港の観光産業に内在する危機

深センから香港への税関

 香港の観光産業の発展は、中国からの観光客に大きく依存しています。 2012年から2020年までの訪問者数の内、中国人観光客は全体の70%以上を占めました。この過度な依存構造は、中国の観光市場に大きな変化があった際に、香港の観光業界が簡単に対応できなくなるという影響をもたらします。

 例として香港オーシャンパークを取り上げます。昨年、香港オーシャンパークは香港民主化デモやコロナの影響で訪問者数が激減し、生き残るために54億香港ドルもの政府の支援を受けました。危機の理由の一つが中国からの観光客に依存していたためです。ただ他にも、ビジネス目的の訪問者にとっても香港の魅力が低下していると言った理由も存在します。ビジネス目的の訪問者数は2003年の300万人から2019年は303万人と16年たってもほぼ同数を保っています。以前は急速に経済が発展し、ビジネスの面でも非常に注目され、コンベンションと展示会の街として知られていました。しかし近年は北京や上海など中国本土の都市、シンガポールやソウルなどの周辺都市の経済発展により、香港は以前程の注目がありません。また、香港の観光産業全体としても中国本土の近隣都市との競争に直面しています。かつて中国人を魅了した香港オーシャンパークや香港ディズニーランドなどの有名な観光名所は、中国国内でも類似施設が建設され、わざわざ香港に行くメリットがなくなったのです。香港には新しい観光施設もあまり増えていないため、人気の観光地は香港オーシャンパークや香港ディズニーランド、ビクトリアピークなど昔と変わらないままです。

 過去20年間、香港の観光産業は基本的に急速な発展の段階にあり、欠点には目を向けてきませんでした。コロナは香港の観光産業の奥深くに隠された危機を露呈させたのです。

 ショッピングは多くの観光客が香港を訪れる理由の1つでした。 2000年から2018年にかけて、インバウンド観光客の総消費金額のうち60%以上が買い物に費やされました。しかしながら2020年以降、中国の海南省は離島での免税事業政策をさらに開放し、以前香港でショッピングを楽しんでいた中国人観光客はわざわざ香港を訪問せず自国でショッピングを楽しむようになりました。

人が少ないショッピングエリア