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観光地の「今」を歩いてみてわかったこと-RT Collection 柴田真人氏寄稿

  • 2021年3月17日

 それは京都でも同様です。京都のホテル稼働率が激減していることは知っていましたが、街中の観光地がどのような状況かを見るために実際に歩いてみました。観光客に人気のスポットといえば、京都らしい和風の建物が並ぶ二年坂です。

 今回、平日に訪れたということもありますが、観光客のいない写真を撮ろうと思ったら早朝に行くしかなかった二年坂の今は、石畳の道ではすれ違う観光客は数名程度、お店は半分以上が休業状態、いつも満席の二年坂にある人気のスターバックスにも空席があるほどです。写真を撮るにはとてもよい雰囲気ですが、旅行事業者や観光関連事業者にとっては非常に厳しい現実と実感しました。

二年坂の様子

三年坂の様子

 話は高野山に戻りますが、今回お世話になった宿坊「不動院」さんにはとても感心しました。お寺での感染対策については実際に行くまであまりイメージが沸きませんでした。都内でもよく見かけるようなアルコールやパーテーションの設置、マスクの着用、検温チェックくらいかなと思っていましたが、予想以上に徹底的な感染対策を実施した上で宿泊者を迎え入れていました。

例えば、
・抗菌仕様の畳を設置
・客室に空気清浄機の設置
・客室のトイレは非接触型の全自動ウォシュレットを設置
・非接触型のセンサー式洗面台を設置
・食事は個室対応
・お風呂は時間枠を設けて貸切風呂対応

 宿坊に求める伝統や歴史に対して、こういった近代的な設備の設置に違和感を覚える人がいるかもしれませんが、今後重要になる「安心、安全」という意味では必要になってきます。そして、私自身も今回安心して宿泊することができました。また、旅行者に対して安心、安全を提供するための設備投資をする事業者は応援したくなりますし、こういった情報を旅行事業者はしっかりと旅行者に伝えなければならないと改めて実感しました。

不動院の客室

客室の非接触型のセンサー式洗面台

 高野山に滞在している際に奥之院ナイトツアーに参加しました。奥之院ナイトツアーは夜の真っ暗な中、懐中電灯を照らしながら奥之院を歩く1時間30分のツアーで訪日外国人観光客に人気のツアーです。今は訪日外国人観光客がいないことから今回の参加者は全て日本人旅行者でしたが、参加者の8割が一人旅の旅行者で一人参加のほとんどが女性でした。高野山という旅行先の特徴から一人旅が多かったのはあるかもしれませんが、それにしても一人旅率が8割だったことに対して、改めてコロナ禍での一人旅の重要性を感じました。

 また、最近ではトレイルや自転車ツアーがトレンドになりつつありますが、密になりにくい歩くツアーというのもコロナ禍でもコロナ後でも非常に重要になるコンテンツと再確認しました。

 日頃、都内の自宅やビジネスホテルでテレワークをしていると情報だけがひとり歩きして耳に入ってきます。旅行業の基本「現場原則」を忘れがちになりつつあったため、今回の視察は現状を把握する上ではとても内容の濃いものとなりました。次は長野県あるいは東北の方に足を運んでみたいと思います。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。