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観光は次世代の重要産業、サウジアラビアで進む巨大プロジェクトの全貌
ザ・レッド・シー・ディベロップメント・カンパニーCEOのジョン・パガーノ氏

巨大リゾート開発プロジェクト「コーラル・ブルーム」とは?
リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)で自然を保護し次世代に残す

 サウジアラビアの西海岸、紅海に浮かぶ島々で大規模なリゾート開発が進んでいる。石油産業依存からの脱却を目指すサウジアラビアは、観光産業を次世代の重要産業と位置づけており、この開発もムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する国家プロジェクトだ。今年に入り、「コーラル・ブルーム」ブロジェクトとしてコンセプトが発表された。手掛けるのはザ・レッド・シー・ディベロップメント・カンパニー(TRSDC)だ。「携わる多くの人にとって一生に一度の大プロジェクトになる」と話す同社CEOのジョン・パガーノ氏に、「コーラル・ブルーム」の概要や現状、日本市場への期待などを聞いた。(聞き手: 弊社取締役 森本高史)

ザ・レッド・シー・ディベロップメント・カンパニーCEOのジョン・パガーノ氏

—まず、ご自身の経歴を教えて下さい。

ジョン・パガーノ氏(以下、敬称略) これまで約40年にわたり、世界中で不動産開発事業に携わってきました。ロンドンをベースとする世界的なディベロッパー「Canary Wharf Development」で23年以上勤め、数々の大規模案件に関わってきました。バハマのナッソーをベースとする「Baha Mar Development Company」では、社長を勤め、カジノやラグジュアリーホテルなどを含む大規模リゾート開発にも取り組みました。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が会長を務めるTRSDCのCEOには2018年1月に就任しました。「コーラル・ブルーム」はサウジアラビアが進めるフラッグシップ・プロジェクトです。サウジアラビアには観光に対して強い情熱があり、このプロジェクトに迎えられたことを大変うれしく思っています。

—「コーラル・ブルーム」のコンセプトを発表されました。その開発計画をお聞かせください。
「コーラル・ブルーム」コンセプトの俯瞰図

パガーノ このプロジェクトは、サウジアラビアが策定した2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」に大きく貢献するものとして構想されています。世界でも観光がGDPの大きな部分を占めているように、石油産業依存からの脱却を目指すサウジアラビアにとって、観光は将来の経済政策のカギになるものです。今回のプロジェクトは、サウジアラビアが初めて世界中から観光客を呼び込もうとするものです。

 リゾートは紅海のアル・ワジ・ラグーンに浮かぶ22島と紅海の沿岸地域にある6つの内陸部の敷地で開発されます。現在、そのうちのひとつシュライラ島で第1フェーズが進んでおり、最初のホテルは2022年末までに、残りのホテルは2023年にオープンする予定で、合計16のホテルとリゾートにて約3000室の客室を提供します。

 設計は世界的な建設事務所のフォスター+パートナーズが担当。ホテルやヴィラは島の自然に溶け込むような空間となり、運営は世界有数のホテルブランドがおこないます。また、国際空港や1万2000人の労働者が暮らすビレッジの建設も進んでいるところです。

 最終的に、2030年には22の島々と6つの内陸部の敷地には50のリゾートが展開し、最大8000室のホテルと約1000軒以上の住宅物件を提供します。また、高級マリーナ、ゴルフコース、娯楽施設、レジャー施設なども併設します。総敷地は約2万8000平方キロ。ベルギーよりもやや小さい巨大なリゾートとなります。