業界団体の役割を問う-「一時」代表アレックス・デベス氏
デベス オリンピック・パラリンピックがどのような形になるにせよ、それによるインバウンド需要には期待していません。昨年から旅行を延期しているお客様もいますが、春の予約については今年も難しいだろうと伝えています。また、秋頃に国境が開いても、渡航のルールが厳しく、一般の観光客が日本を訪れるハードルは高いでしょう。
今年中に少しでも回復してくれれば良いのですが、本当のリスタートは2022年になると思います。インバウンドの規模は2022年で1000万人くらいになるのではないでしょうか。国境が開くのも段階的になるでしょうし、旅行好きの人のなかには行けるのであればすぐにでも、という人もいますが、慎重派の人や体調に不安のある人もいるでしょうから、一気に2019年のレベルに戻ることはないと考えています。その間に準備をしていかなければなりませんね。
デベス 変化としては、大人数を避け、FITやプライベートでツアーを利用する人が増えることになると思います。変わるべきなのは、地域経済との関わり方ではないでしょうか。コロナ禍により、これまで以上に地域経済へ好影響をもたらす旅行が良いという考えが広がりました。サステナブルツーリズムという視点と従来のパッケージツアーとは相容れないものだと思います。地域経済を回すことができる旅行会社がもっと力をつける必要があるでしょう。
一時ではラグジュアリーな旅行を売りにしています。手配の際はホテルにこだわるのはもちろん、地元のタクシー会社のプライベートドライバーを手配し、ガイドブックに載っていないような小さなレストランを探し、ローカルガイドを付け、ディープな経験をしたいという要望に応えます。それが地域経済にも良いと考えています。
私たちのパートナーには、自宅で生け花やお茶会などのイベントを行っている小さな会社がたくさんあります。倒産ではないので取り上げられませんが、今そういった方々に援助が届いておらず、次々と廃業を余儀なくされています。その意味でGo Toトラベルは地域経済に届いていません。すぐに手を打たなければ、このようなサービスを提供する人はいなくなり、コロナが収束しても画一的な旅行しかできなくなってしまうでしょう。手遅れになる前に考えて行動を起こさなければなりません。
デベス 業界団体の重要な使命は多様なメンバーをサポートすることですが、それが忘れられているのではないでしょうか。また、イノベーションは小さな会社から起こると思っています。業界団体にはもっと中小の会社の新しい意見やアイデアを掬い上げてほしいと願っています。