コロナ後初の海外取材、シンガポールの現状は?ビジネスイベント開催事例も紹介
コロナ禍で安全に渡航者を受け入れる方法は?
集団は5名まで、抗原検査でイベントの安全確保
視察プログラムではナショナル・ギャラリーや「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」などを訪れたが、そこへの移動はすべてあらかじめ決められた4名のグループとガイドの5名で専用車を利用。これは集団は5名までというルールに則ったものだった。通常のFAMツアーにあるような街の散策などは皆無で、従って街の雰囲気がどうだったかなどを書き記す材料は得られていないが、車窓を通して見る印象としては、マスク着用や検温、集団の人数制限などを除けば日常生活は相当程度戻っているのではないかと感じた。
また、コンベンションの防疫対策としては、全体で約300名の参加者に「A1」などの記号を割り当て、会場内と休憩スペースに記号ごとの専用ゾーンを用意。さらに、入場前に毎日抗原検査を実施し、陰性の結果が出ない限り会場に入れないようにする工夫もしていた。
抗原検査のプロセスとしては、数十名ずつのグループごとに専用の検査レーンを設け、検体を採取し終わって結果を待つ間は各グループの待機場所に誘導して他グループと入り混じらないように工夫。その後、メールで知らされた結果を係員に提示すると晴れてシールをネームホルダーに貼ってもらえる仕組みとなっていた。
明確なルール設定と厳格な運用が鍵、ビジネスイベント先行に活路か
総論としては、参加者を厳格な管理下に置く(旅程も「コントロールド・アイテナリ」と称していた)ことでリスクを極小化し、それによって他のデスティネーションに先駆けて実験的にでも往来を再開しようとする姿勢が見られ、実際にそれが成功していたように感じる。日本は緊急事態宣言のさなかではあるが、今後検討されているという管理型ツアーからの訪日再開の参考にもなるだろう。
ただし、「ちょっとホテルの周辺を散歩してみる」「ホテル内のスーパーかコンビニで土産物でも」といった自由はなく、逆にそういったルールからの逸脱を認めてしまえばなし崩しになることも明らかで、レジャーとしてはそのルール作りと運用の厳格さのバランスをとることが難しくなるだろう。その意味では、ミーティングやコンベンションなどのビジネスイベントから先行して再開するというSTBの判断は理にかなっているのではないかと感じた。
取材:松本裕一