MICE復活へ、シンガポールでハイブリッド会議開幕、日本からも渡航

ハイブリッド形式で開催されたパネルディスカッション。同時にオンラインで世界中の視聴者に配信された

(シンガポール発 特派 松本裕一) ミーティングやコンベンションなどビジネスイベントの専門家らが加盟するプロフェッショナル・コンベンション・マネジメント・アソシエーション(PCMA)が1月13日、シンガポールでハイブリッド形式のイベント「PCMA Convening Leaders 2021」を開幕した。シンガポール政府観光局(STB)とマリーナ・ベイ・サンズ(MBS)の協力を得たもので、今後コロナ禍からの回復をめざす中で、ビジネスイベント業界がどのような道をたどるべきかを主題として講演やパネルディスカッションが開催される。

 ハイブリッド形式の同イベントは、サンズ・エキスポ&コンベンションセンターを会場とし、昨年新設された動画配信専用のスタジオも活用。リアルの側では、シンガポールを拠点とする関係者のほか、日本を含む各国からオーガナイザーや記者らも招待されて合計で約300名が参加。一方、バーチャルでは3000名が視聴登録をしているという。

 基調講演は、ピューリッツァー賞を3度受賞しているジャーナリストのトーマス・フリードマン氏が担当し、コロナ禍を踏まえつつ現在の世界についての様々な考察を披露。例えば、コロナ以前にも人類がこれまでも「地政学的パンデミック(同時多発テロ)」、「経済的パンデミック(リーマンショック)」を経験しており、さらに次は「気候変動的パンデミック」が控えていると指摘するとともに、インターネットを基盤として世界で起きている急速な変化への対応が生存の鍵になると分析した。

 また、個々人が今後の社会で評価される点として、スティーブ・ジョブズがiPhoneやiPadを生み出したように世界に足りないものに気付ける人物が重要になると分析。これまでは課題を解決する能力が重視されたが、課題に気付けることが活躍の条件になっていくという。

STBのエドワード・コー氏

 STBでMICE担当エグゼクティブ・ディレクターを務めるエドワード・コー氏は13日に本誌取材に応じ、2020年は11月までの累計で訪問者数が前年比70%減となるなど大きな打撃を受けていると説明。そうした中で、MICE分野では再開に向けてビジネスイベント開催計画の申請受付を開始し、これまでに70件の申請が届き、このうち30件はすでに開催されたという。

 9月までは20名までの小規模で試験的に実施し、10月からは定員を250名に増加。11月にはITBと組んで観光業界の再興をテーマにイベントを開催し、例外として1000名規模の参加者を集めたほか、今回も300人を超える参加者が集まるなど着々と実績を重ねているところだ。

 以降の見通しについてコー氏は、各国のコロナの状況次第としつつも、さらに実績を積み上げて安全に開催するためのノウハウを強固にし、デジタル活用などシンガポールが持つ強みも生かしてコロナ後の需要を獲得していきたい考えを示した。


※イベントとコー氏のインタビューの詳細、現地レポートは近日中に公開予定