「銀行はこう使え!」-メガバンク元営業担当が本気のアドバイス vol.4
銀行の与信案件審査とは?
5つの格付で判定
銀行とどう付き合うか―。これは、観光産業だけでなく多くの企業経営者が頭を悩ます課題ではないでしょうか。某メガバンクで新卒から6年法人営業に従事して現在は旅行業界に携わる筆者が、年商1億に満たない会社から東証一部上場の企業まで延べ100社以上を担当してきた経験から、5回に渡って皆様の「知りたい」にお答えします。(過去記事はこちら 第1回/第2回/第3回)
4回目となる今回は、銀行の与信(融資)案件審査について触れていきます。これまでに比べるとマニアックな内容になりますが、審査の裏側を知ることでより効果的に案件を進めることが出来るでしょう。今回は前編として銀行審査の全体感と格付についてお話ししたいと思います。
銀行審査は「決算書」の定量的分析と「銀行員」の定性的分析で進められる
銀行が融資をはじめとした与信案件を検討する際、会社の「格付」を行った後に「案件審査」を行います。格付とは、決算書を基にその会社の財務内容を分析し、信用度をA、B、C・・・といった形で判定することです。この信用力に応じて与信取引を検討するので非常に大切な作業です。
1度与信取引が始まれば、取引が無くなるまで1年に1度格付の見直しを行うので、2度目以降の案件審査はある程度円滑に進められます。銀行審査は明確に権限が定められており、一定の基準以内であれば支店内での決裁となりますが、基準を超えると本部での決裁となります。権限が支店決裁の場合は、その支店の長による決裁が得られれば融資等が実行可能となるため、比較的スピーディ且つ(本部案件より)審査のハードルが低いと言えます。
一方で本部決裁の場合は、より細部まで案件を見られる上に本部が複数支店の案件を審査していることから、決裁までに時間を要し且つ審査のための補足資料を多く求められる可能性があります。この権限は基本的に格付のランク毎に基準が決まっており、総与信額(融資等の足元合計額)や検討する案件の難度、預金担保や不動産担保等の取得による保全等を総合的に勘案して判断されます。
格付・案件審査ともに一定のルールの中で運用されますが、企業の実態把握の度合いに応じてある程度の裁量も認められているので、銀行に対する情報開示は非常に重要です。特に案件審査は銀行にとってリスクとリターンを検討する場であり、財務の健全性や事業の将来性等をしっかり銀行に理解してもらうことで融資を引き出しやすくなります。案件組成の過程で銀行との繋がりが強くなるほど、支店内案件の決裁も得やすくなるでしょうし、本部案件の後押しも期待できます。小規模案件を除き、今しばらくは与信案件審査のフローも完全な自動化は出来ないと思われますので、属人的な部分と数字の裏付けによって上手く銀行と付き合っていきたいものです。