「銀行はこう使え!」-メガバンク元営業担当が本気のアドバイス vol.4
銀行の与信案件審査とは?
5つの格付で判定
格付作業の具体例
この格付ですが、実際にどのような作業なのでしょうか。銀行によって基準の違いはあると思われますが、私の経験では総与信額等が一定の範囲内であればB/S・P/Lの表面上の数字で分析し格付を付与していました。この場合はシステマチックに格付が付与されるため、担当者の裁量はほぼありません。
一定の基準を超えた場合、肝となるのは「実質貸借対照表」の作成です。具体的には、B/Sにおける「資産の部」の資産性を評価しその結果を純資産に反映させる作業です。具体例を示すと、不動産に簿価以上の価値(含み益)が認められれば、余剰価値分を純資産に上乗せします。この作業により算出された実質貸借対象を基に数値分析を行い、格付が付与されます。どこまで深度ある分析をするかは銀行次第となりますが、勘定科目明細に記載されている内容の裏付けなどを求められるのは、含み益/含み損の算出のエビデンスとして必要となるためです。同様の理由で子会社との貸借がある場合は子会社の決算書を求められるケースもあります。
定量面での分析は各種指標による数値化をメインとして、(実質)債務超過か否かの判定、債務償還年数が分析の柱です。各種指標による分析結果が正常先であっても、(実質)債務超過であれば要注意先以下と判定されることもありますし、債務償還年数が一定以上であると要注意先以下と判断されます。
ちなみに債務償還年数は銀行により算出方法・基準に若干の差があると聞きますが、大まかには「要償還債務(有利子負債等-現預金-運転資金)÷償還原資(利益+減価償却費)」で算出されます。
長期の運転資金が最長5年、設備資金が5~15年程度で回収することが一般的と考えると、債務償還年数が10年を超えると借入が多い若しくは収益力が小さいと捉えられます。要注意先判定されるか否かの基準は、20年~30年超であるところが多いのではないでしょうか。
以上が銀行の与信案件検討の全体感と格付についてでした。銀行にはこれら作業を行うための手順書が定められており、細かくルールや判断基準が示されています。自社の格付は(教えてもらえるかは別として)銀行担当から聞く以外知る方法がありませんが、既に与信取引がある場合は自社に対する与信スタンスで何となくどの債務者区分にいるか想像できるかもしれません。次回は与信案件について銀行がどのような視点で検討しているかについてお話ししたいと思います。