全日本シティホテル連盟(JCHA)会長 清水嗣能氏
連盟創立50周年への思い
新年を迎えるにあたり、50周年への思いを述べさせていただきます。当連盟の前身である全日本ビジネスホテル協会が1971年に誕生して、2021年に50周年を迎えます。この大きな節目にあたり、まずもって考えていることは、連盟のこれまでの50年を振り返り、これからの50年がいかにあるべきか、という課題です。
私は、個人であれ、会社であれ、そしてJCHAのような組織であれ、存在意義があって然るべきと考えています。私が30歳を過ぎた頃、京都で新しくオープンしたホテルでビジネスホテル協会の15周年記念総会を行ったことがあります。そこのホテルは施設がとても立派で従業員のサービスもすごいなと感じたことをよく覚えています。それに比べて自分のホテルはなんと小さく、みすぼらしく、なくてもいいようにさえ思いました。が、そのとき自分の中からそうした気持ちに反論する声が聞こえて来ました。「自分のホテルなんかなくてもいい、などと思うのでなく、今、自分のホテルは実在しているのだから、どう在るべきかを考えるべきだ」と。これは学生時代に読んだ『夜と霧』という本の中で述べられている一節で、アウシュビッツの牢獄の中で、毎日、仲間がガス室に送られて戻ってこない絶望的な状況においてさへ「自分たちは今生きているのだから、死ぬことを考えるのでなく、いかに生きるかを考えよう」と仲間を勇気づけ、自分も生き残り、後に実存主義という哲学の一派を立ち上げたフランクルの自伝です。そして、自分のホテルをもっと存在意義のある、選ばれるホテルにしようと、その時思いました。そうして「山椒は小粒でピリリと辛い、小さくてもダイヤモンド」などということを考えながら、日々、できることから一つずつ改善を積み重ね、改装と増築を繰り返して来ました。地域になくてはならないホテルであるよう、泊まりたいホテルになるよう、未だ発展途上ながら、今もそう思い続けています。
翻って、これからの我々連盟の在り方を考えたとき、我々は何のために、誰のために存在するのかという問いに対し、それはけっして自分たちのためだけではないはずです。自分たちが楽をし、得するためだけでは、きっと虚しさが残る、と私は思います。全国組織の一宿泊団体として、日本という国に対して、それぞれの地域に対して、そして会員に対して貢献することが連盟としての存在意義を高めることであり、連盟としてのミッションであります。50周年に向け、このミッションを掲げ、会員みんなでホテル業をとおして、国や地域に貢献していくホテルの集まり、それがこれからの連盟の在り方であろうと考えています。
また、人はいい思い出が多ければ多いほど幸せであり、我々はホテルという仕事をとおしお客さまのいい思い出づくりのお手伝いをしているわけです。だからこそ、50周年は、会員のみなさまにとって、いい思い出となるような記念すべき機会にしてゆき、我々ホテル事業者としてのミッションを確認する場とするつもりです。最後に、当連盟がこのようなミッションに基づき、共に、より存在意義のあるホテルを目指す組織になるよう努めてまいります。