コロナ渦に広がる宿泊施設のビジネス活用2例

  • 2020年9月24日

「JTB×NECのシェアオフィス事業」と「文京区本郷の鳳明館」

文京区本郷の鳳明館

 次に紹介するのは旅館のビジネス利用で、舞台は東京都文京区本郷の住宅街にある「鳳鳴館」。昭和20年創業の旅館で、本館、台町別館、森川別館とあるうち、本館は登録有形文化財にも指定されている老舗。

 趣と歴史ある旅館でも、コロナの影響は避けられず、外国人、団体、オリンピック期間の個人客など全てがキャンセルとなり、昨年と比べると稼働率は約1割まで落ち込んだという。

 そうしたなか、コロナ禍と緊急事態宣言で不要不急の外出が認められない状況でビジネス利用の選択肢しかなかったことに加え、住宅街という立地から自宅で仕事をするビジネスマンにサービスが提供できる強みを生かして始めたのが、デイユースプランだ。

 実は坂の上の立地のため風通しが良く、さらに低層の造りのため密になりやすいエレベーターも必要としないため、コロナ対策に上手く適応できる強みもあったという。

 そして、4月のサービス開始時は森川別館のみの展開だったが、現在は全3館で実施。2人以上での利用も対応しており、人数によって使用する部屋を調整している。また、要望があれば文机、会議用のテーブル、パイプ椅子、ホワイトボードやプロジェクターも提供可能で、様々なニーズに対応が可能。利用客のお好みに合わせて文机で小説家気分を楽しんで頂く、というような提案も可能となっている。

 サービス開始時、既にビジネスホテルが同様のサービスを展開しており、旅館でニーズがあるのかという疑問はあったものの、緊急事態宣言後に地元客を中心に月20名程の利用を獲得。宣言解除後はビジネス利用のみならず、一時の楽しみとしてデイユースを利用する利用客や、安心して集まれる場所としての認知が高まり、親睦会などの利用での問い合わせも入っているという。

 実際に利用客からは「非日常感と静けさで効率が上がる」「リフレッシュできた」といった声が上がっており、デイユース利用が今後の宿泊利用に繋がることもありそうだという。

 ちなみに海外では、子どもの授業もオンラインになっていることを受けて、家族まるごとの「ワーケーション」をターゲットにしたプランなども増えているところ。あるいは、大手ホテルチェーンでは、グローバル企業の従業員が各国のホテルに集まって会議するような取り組みも始まっているという。