コロナ渦に広がる宿泊施設のビジネス活用2例

  • 2020年9月24日

「JTB×NECのシェアオフィス事業」と「文京区本郷の鳳明館」

 コロナ禍で甚大な打撃を受ける宿泊産業。影響が本格化した3月から7月までの延べ宿泊者数は前年比68.8%減の7826万人泊となった。ようやくGoToトラベルの対象に東京発着の旅行も加わったものの、本格的な回復には程遠い。そうしたなか国内外で広がりを見せるのが、リモートワークなど変化する働き方に合わせて「仕事場」として自社施設を利用してもらう仕組みだ。本稿では最近発表された国内の2例を紹介する。

JTB×NECソリューションイノベータ
遊休スペースを活用したシェアオフィス事業

 宴会場や朝食会場など一部の時間帯以外利用されない遊休スペースは、コロナ禍以前から宿泊施設にとって課題であり続けた。これに対してJTBと、官公庁から金融、一次産業などへ幅広く情報サービスを提供するNECソリューションイノベータが8月31日から開始したのが、そうしたスペースをシェアオフィスとして活用する事業だ。

 具体的には、ホテルの客室や会議室をワークスペース用に提供するもので、JTBはスペースを提供できる施設と、テレワークの場所を探している企業との契約や、精算業務を担う。一方、NECソリューションイノベータ側は利用者がワークスペースの検索、予約をするアプリケーションの開発、運営、保守を担当している。

 事業の開始時期を考えるとコロナによる新サービスだと思いがちだが、実際は昨年の秋には話が進んでいた。ただ、当初は宴会場などの活用を想定していて、客室はその対象ではなかったが、コロナによる影響でホテル全体の遊休スペースがサービスの対象となった。

 特徴は、利用するスペースや時間を自由に選べる点で、オンライン会議の場合は客室を、書類作成であれば会議室などのコワーキングスペースを、といったように業務内容により場所を使い分けることが可能。また、コワーキングスペースは15分単位で利用可能で、最短15分前に予約ができるため、急な空き時間に利用することもできそうだ。利用者はアプリを通して検索、予約するが、精算は企業とJTBが行うため、面倒な精算業務が発生しない。現地ではスマートフォンの画面提示で手続きが完了するため利便性も高い。

 8月31日の事業開始後、企業側の問い合わせは多数寄せられており、9月23日時点で利用者は10名を超えている。また、現在は東京都と千葉県のみの展開だが、来年3月頃を目途に名古屋、大阪、2020年3月までに全国へ順次展開する予定だ。実際に、利用可能なホテルは7月28日時点で8社だったが、既に50を越えているという。