【コロナに負けず】べっぷ野上本館代表取締役社長の野上泰生氏
収益ポートフォリオの多様化でコロナに立ち向かう
別府は「サバイバル時代」、地域や長期滞在に活路
野上 「べっぷ野上本館」は、4月6日から6月末までは一部の週末などを除き休業していた。その間にお風呂やロビーなど、旅館を休業しないと難しい場所の改装を優先的に実施した。内部のオペレーションの仕組みも、今まで紙が多かったものを電子的なシステムに変えた。時間があるからこそ今までできなかったことに取り組むともに、サバイバル計画を立てて運営資金を獲得し、営業再開に備えた。7月からは宿泊料金を少し下げながらも通常通り営業している。
今回のコロナ禍で感じたのは、収益ポートフォリオをいかに多様化していくか。コロナ以前は、週末を日本人の個人客、平日を訪日客で埋め、収益力を向上させることが最強の策だと思っていたが、コロナ後は地域の市場や長期滞在など、多様なチャネルを作っていかなければと感じた。道半ばだが、そうした取り組みを始めている。
地域への取り組みとしては、2階のラウンジを地域の人々に開放しようとしている。これまでお客様の1、2割に対して夕飯を提供していたが、7月から止めたので、ラウンジとキッチンがお昼以降空く。このため、地域の人にシェアキッチンラウンジのような形で提供し、そこから売上をあげていければと準備している。
野上 旅館での長期滞在者の取り組みには懐疑的な部分もあり、実験的に1週間滞在プランの販売を開始している程度。今後はお客様と対話しながら、旅館としてどういう滞在が提供できるかに取り組んでいきたい。
一方でアパートメントホテルでの長期滞在は可能性を感じている。会社が持っていた賃貸アパートを改装し、2017年から簡易宿所「シンプルステイ別府」を運営しているが、収益性が高く、かなりの市場規模があると気づいた。
経営指標としては、賃貸時と比較して何倍の売上があるか。シンプルステイ別府では通常は4倍から5倍、イベント需要など多い時は7倍から8倍の売上がある。コロナ禍の現在でも2倍弱だ。悪い時に2倍、通常時は5倍稼げる、ということが立証されれば賃貸よりもメリットが高いといえるだろう。現在数字を整理しているところだ。
野上 別府には立命館アジア太平洋大学(APU)があるので、大学関係の長期滞在需要がある。あとは観光地にゆっくり滞在する需要。加えて、帰省などで家族や友人に会うVFRやビジネス需要がある。このほか、今はコロナ禍で帰国できない外国人のお客様も受け入れている。
このほか、もともと別府には戦前に温泉研究所があり、保養目的の長期滞在が観光を凌駕するくらいあった時期もあったことから、湯治と人間ドックなどを組み合わせた需要もあるとは思う。ただ、ハイエンド市場なので、我々の場合は宿泊施設の設備などとそぐわない。リゾートホテルが人間ドックとタッグを組んで中華系の富裕層を誘致しているケースもあるが、なかなか見えてこない市場だ。