海外版コロナガイドラインの策定開始-オペレーターとの取引適正化「進む」
日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)は6月8日、都内の同協会で業界誌向けの記者会見を開催した。例年は6月の通常総会と同日に実施しているが、今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、総会は3日に時間や参加人数などを大幅に縮小して開催。日を改めて記者会見を開いた。
会長の大畑貴彦氏は、多くの会員企業の4月から6月までの売上高がほぼゼロに近く、現時点では7月以降の国際線の回復の見込みも不透明であることなどについて述べた上で、「航空需要が2022年くらいまで戻らないという話もあるが、そうなると旅行会社やオペレーターはいつまで持つのか」と苦況を説明。一方で、今月5日には日本旅行業協会(JATA)およびアウトバウンド促進協議会と海外旅行向けの感染症対応ガイドラインの策定に向けた協議を始めるなど、需要回復の開始を見据えて準備を進めていることも明らかにした。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の最新の見解などに基づき、「足並みを揃えて、総力戦で」策定に取り組み、早期の公表をめざすという。
また、6月末にはJATAなどとの共催で、台湾や韓国、ハワイ、米国、欧州など主要な10数エリアに関する、現地事情オンラインセミナーを予定していることも説明。空港でのCIQや、現地のホテル・レストラン・観光バスなどにおける対策の最新情報を、各国政府観光局などの協力を得ながらできる限り収集して、提供する準備を進めている旨を伝えた。海外旅行の回復に向けた日本国内の機運を高め、回復までの時間を少しでも短縮する考え。
大畑氏はそのほか、このほど一部の報道機関が、政府が出⼊国規制緩和策としてタイなど4ヶ国について、早ければ今夏にも、PCR検査の陰性証明書や行動計画書などを提出した業務渡航者の入国時の⻑期間待機の免除を検討していると報じたことに言及。「風穴を開けるファーストステップ」として歓迎するとともに、実施された際には旅行業関係者などが積極的に研修旅行などで渡航し成功事例を作り上げ、その後に留学生や観光客にも対象が拡大されることを期待した。
長年の懸案事項である手配代金の支払い早期化など、旅行会社とオペレーターの取引の適正化については、海外旅行オペレーターが国内旅行を対象とする「Go To キャンペーン」の恩恵に預かれないことについて述べた上で、「事業継続の努力はいつまで続くか分からない。今後の海外旅行の運営のためにも、支払いの流れを大きく変える必要がある」と改めて主張。「これまでは仕事があったから何とかなっていたが、今はない。今後はいきなり仕事が来ても対応できない」と述べ、コロナ禍後の取引適正化については「進むと思う。そうでなければ(海外旅行を)運営できない」と強調した。
なお、OTOAによれば3日の通常総会では、20年度の活動計画案などを承認。観光庁が昨年7月に開設した「ツアーセーフティーネット」については、今年4月からOTOAが200都市の「都市別安全情報」を提供し、情報更新の頻度も隔年から毎年に変更する。正会員数は昨年3月末時点の138社から、現在は129社に減少しており、当面はコロナ禍により退会する企業が増える見通し。「旅行サービス手配業」の登録制度開始に伴い、前年度に開始した訪日専業オペレーターの賛助会員としての受け入れについては、申し込みはなかったという。