アビアレップス、旅行需要の回復見据え「5つのステップ」
政府観光局や航空会社、ホテルなどのGSAやマーケティング業務を手がけるアビアレップスで日本支社長を務めるアシュリー・ハーヴィー氏は、4月13日に業界誌によるオンラインでのインタビュー取材に応じ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大に大きな影響を受けている同社およびクライアントの現状や、今後の回復策などについて語った。同氏は2012年から16年まで英国政府観光庁の日本代表を務めた後、一般社団法人の中央日本総合観光機構で最高執行責任者(COO)を務めたのちアビアレップスに入社。昨年7月から同社の日本支社長を務めている。
ハーヴィー氏は冒頭で、アビアレップスグループでは最初に航空会社のGSA事業が大きな影響を受け、特に本社のあるドイツを含む欧州が打撃を受けたことを説明。その後、2月下旬以降は日本でもホテルなどが大きな影響を受け始め、ここ1ヶ月は世界各国が出入国に大きな制限を設けたことで、観光局の業務にも被害が波及していることを伝えた。「1月からの100日ほどで、新型コロナウイルスが世界経済をすべて止めてしまったようだ」という。
ハーヴィー氏は、今後の感染拡大の収束や旅行需要の回復の見通しについては「誰にも分からない」と述べた一方、中国では感染拡大が収束の兆しを見せ、国内旅行が開始されていることを説明。感染拡大を封じ込めつつあると見られる韓国などについても「すぐに海外旅行とはいかないが、国内旅行は始まり出すのでは」と述べ、今後は各国で回復に向けた取り組みが少しずつ始まることに期待を示した。
日本市場における旅行需要については、今後は国内各地での感染拡大の収束などに伴い「5つのステップ」で回復すると予測。まずはウイルスの制御が可能になった都市などから、その圏内での「スーパードメスティックな旅行」が始まるとし、その後は段階的に「一般的な国内旅行」「近隣国やグアムなど近場の海外旅行および業務渡航」「近距離の海外旅行」「長距離の海外旅行」へと拡大して、出国者数は「いつかは2019年(の最高記録)を超えると思う」と述べた。ただしあくまでも各地の感染の状況や、各国間の出入国規制の状況の改善に依るところが大きいとし、各ステップのスケジュール感については見通せないとした。
収束後の日本市場における、政府観光局など各クライアントの活動については、「多くが日本向けの予算を減らして最低限の活動を続けている状況で、一時的な休止状態にあるところも多い」と説明。「休止」の期間についてはそれぞれ異なり、「2月から休止したが5月には再開したいというところもある」など、さまざまであることを伝えた。今後の需要回復策については、日本のように官民を挙げて大キャンペーンに取り組むケースは少ないと見られることについて述べた上で「すべてのクライアントと検討を進めている」と強調。米国の観光局などは、国内旅行さえ再開されれば宿泊税により財源が確保される見込みであることについて語り、「その際には我々も迅速に動きたい」と考えを示した。
そのほか、感染拡大の収束後も各航空会社が座席供給量を絞り、各国も出入国規制を以前よりも強化する可能性があることなどについは「これまでと同じ姿に戻るわけではなく、今後は大きな変革を受け入れなくてはならないだろう」と予測。数ヶ月前までは世界中でオーバーツーリズムの問題について議論されていたことについても言及した上で、「旅行需要の地域ごとや時期ごとの分散化の“再定義”をする上で、今は良い時期なのかもしれない」と語った。
アビアレップスの事業の回復については、近年取り組んできた食品業界など他分野のクライアントの獲得やデジタルマーケティング、日本版DMOとの連携強化なども積極化する考えを説明。来年に延期された東京五輪に関しては、「世界のメディアに向けてあと1年間、危機管理などの取り組みに関する情報を発信してほしい」と各方面に要望した。具体的には、今年の後半に感染拡大の第2波が生まれないよう、日本でも家庭用の検査キットやドライブスルー型検査によってPCR検査の件数が増え、国外に示されることを求めた。