新型コロナ、ANTA会員5600社への影響と今後は-有野専務に聞く
アンケートで危機的な窮状が明らかに
収束後のV字回復へ「戦略考える機会に」
新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本の旅行・観光産業は未曾有の危機に直面しており、その影響は旅行・運輸・宿泊・飲食など幅広い分野に及んでいる。観光産業は裾野が広いだけに、その被害も甚大だ。先が全く見通せないなか、当面の資金繰りや雇用維持で大きな不安を抱えている事業者は多い。
そのようななか、中小旅行会社を中心に約5600社が加入する全国旅行業協会(ANTA)は3月23日、日本旅行業協会(JATA)などとともに政府の集中ヒアリングに参加。会員企業の厳しい現状を報告するとともに、旅行業界を支える対策を要望した。その詳しい中身やねらいについて、同協会専務理事の有野一馬氏に話を伺った。インタビューは3月末に実施した。
有野一馬氏(以下敬称略) 旅行業界だけでなく、日本の経済にとって100年に1度あるかないかの事態だと認識しています。その影響はSARSやリーマンショックの時などとは比較になりません。全世界的に影響が広がっているのは、これまでにないことだと思います。
例えばリーマンショックの時は、国内旅行が中心のANTA会員への影響は、ある程度間接的なものにとどまっていたのではないかと思います。しかし今回は非常に多くの会員が直接的な影響を受けています。このような甚大な影響は初めてのことです。
ANTAとしましては会員に与える影響を最小限に抑えられるように、会員の支援に向けて全力で活動を続けています。二階俊博会長をはじめ、副会長、役員の皆様と力を合わせて、この危機を乗り越え、その後の「V字回復」のために全力を尽くさなければならないと思っています。
有野 23日の集中ヒアリングには、運輸・宿泊・観光関係者が出席し、ANTAからは近藤幸二副会長が出席しました。集中ヒアリングは政府が各界の要望を聞いた上で、今後の経済対策に反映させるために開かれたものと承知しており、ANTAからは5項目を要望しました。
まず、中小旅行業者の資金繰りが著しく悪化していることから、「緊急融資の迅速な実施」をお願いしました。特に、緊急融資の審査手続きがさらに速やかに行われるように、「窓口機能の強化」を要望しました。
2つ目は「雇用調整助成金の助成率の引き上げ」です。現在は中小企業に対する助成率は3分の2ですが、これを少なくともリーマンショックの時と同レベルの対策として、10分の9まで引き上げていただけるようにお願いしました。
3つ目は「中止になった修学旅行の取り扱い」です。春の修学旅行などの中止が急増しているので、2009年の新型インフルエンザ流行時のように、文科省から各教育委員会に向けて、「中止」ではなく「延期」を検討するようご指導いただきいとお願いしました。また、実施する際には秋の京都など、特定の時期や場所に集中しないようにもお願いしました。
さらに、学校側に生じたキャンセル料については、09年に創設された「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」と同様に国の財政で支援していただき、学校側が予算化されていない支出に困らないような措置をお願いしました。