新型コロナ、ANTA会員5600社への影響と今後は-有野専務に聞く
アンケートで危機的な窮状が明らかに
収束後のV字回復へ「戦略考える機会に」
有野 4つ目は「わかりやすい正確な情報の提供」です。事態が落ち着いた後に再び旅行をしていただく環境を作るためには、安全・安心であることを分かっていただく必要があります。そのためには感染防止の取り組みについて、一般の人にとって分かりやすい正確な情報を提供していただきたいとお願いしました。
最後の5つ目は「一刻も早い終息と『旅行需要喚起政策』の実施」についてです。事態が終息した時には「旅行による国民の意識や気分の転換」をはかるような施策をお願いしました。加えて、需要が落ち込んでいる地方の元気を取り戻すために、「前例のない規模」の旅行需要喚起策を大きく進めていただきたいと要望しました。その際にはANTAとしても、全国の5600社の会員を挙げて取り組んで協力したい旨を申し上げました。
有野 その後の安倍総理の会見では、集中ヒアリングで各産業界から寄せられた要望について、強大な緊急経済対策に取り込むことが表明されました。迅速な対応に感謝申し上げるとともに、会員の皆様においては希望を持って、厳しい状況を乗り超えていただきたいと思っています。
また、3月末に厚生労働省から、雇用調整助成金の特例措置の拡大を4月1日から6月30日までの間、さらに行うことが発表されました。助成率は、現在の特例では中小企業が5分の4、大企業が3分の2ですが、解雇などを行わない場合は中小企業が10分の9、大企業が4分の3に引き上げられるとの画期的な内容です。要望したことを早速実現していただき大変有難いことだと思っています。
緊急融資や雇用調整助成金の拡大などについては、まずは事業者の経営を維持するために、最優先に取り組んでいただきたいと思います。それは、今後の旅行需要をしっかりと取り込むためにも大切なことだからです。
有野 今月に入り、47都道府県の支部長にそれぞれ1社を対象とする緊急調査を実施し、36社から回答を得て、3月前半の予約のキャンセルが8割以上となった会員が64%に上り、3月全体では78%、4月全体では67%になる見込みであることが分かりました。1月の時点では0%、2月も6%だったので、状況は非常に厳しくなっています。4月は実際には、さらに厳しくなることを懸念しています。
回答のなかにはキャンセルが3割以下で、影響は比較的少ないと回答している会員企業が3月・4月に関しても数%ありましたが、おそらく繁忙期の時期の違いによるものだろうと思います。例えば、秋の旅行に強い会社などは、まだ大きな影響が出ていないのかもしれません。
このほか、2月にも旅行への影響に関する調査を2回実施しましたが、日本人の国内旅行のキャンセル・延期数について、2月7日の調査では397社・2万2000人だったのが、28日の調査では2796社・35万6000人に急増しました。日本の旅行消費額の8割を国内旅行が生み出していることを考えますと、現状の深刻さが伺えるものでした。
ANTAが会員企業に対して実施しているアンケートの回答率は、通常は20%から30%程度ですが、28日の調査では50%もの回答がありました。これは会員の皆様が、現在の窮状を訴えたいと思っている表れではないかと思っています。ANTAとして、そのような現場の声を今回の要望には強く反映させていただきました。
このほか、先述した47都道府県支部への調査では、「現状が続いた場合、資金繰りは何ヶ月持つか」との質問に対しては「2〜3ヶ月」と答えた企業が39%で最も多く、次いで「3〜6ヶ月」が28%となりました。「6ヶ月~1年」はわずか11%でした。「不明」が22%ありましたが、どの企業もすぐに資金繰りの計算ができるわけではないことを考えますと、実際には「目処が立たない」と解釈した方がいいのかもしれないと思います。