「持続可能な観光」に向けた業界の施策、フィンランドがパネル開催

認証制度「サステナブル・トラベル・フィンランド」を始動
伝統料理など多様な視点で取り組みを

サステナビリティを新たな商機にも

 フライトシェイム問題に直面する永原氏は、「航空輸送がなくては人の移動も物流も考えられないはずだ。しかし、例えば航空輸送を過剰に利用する企業とは取引をしないといった状況も生じかねない」と指摘しつつ、一方で「安ければ何でもいいという発想から、少し高くても地球に優しい方を選びたいという流れになることを意味し、新たなチャンスと捉えることもできる」とコメント。そのうえで、「例えばAY路線は日本から欧州への最短距離であり、こうした価値を地道に理解してもらうことも重要だと考えている」と語った。

 ちなみに、航空輸送の環境負荷軽減に向けて旅客ができることもあり、例えば「AYの場合、旅客が手荷物重量を1人キログラム軽くするだけで、1年間でヘルシンキ/東京間10往復分の燃料を節約できる」という。ルフトハンザ・グループが関わるメディア「Travel & Mobility Tech」が掲載した記事では、航空券予約時に森林再生のために追加料金を支払う意欲があると答えるのは73%であるのに対して、実際に支払うのは1%のみという調査結果を伝えており、サステナビリティの実現にはそうした消費者行動も意識しておく必要がある。

 また、駐日フィンランド大使館商務官のハカラ氏は、食品担当の立場から食に関する取り組みを紹介。職は観光に欠かせない要素でもあるが、「重要なポイントは食材を作ることによって排出される温室効果ガス、食材の配送と物流による環境への負荷、フードロスの3つ」であるとした。

 加えてハカラ氏は、サステナビリティを心掛ける一つの方法として「伝統料理」に言及。「伝統料理は地産地消であり長年にわたり自然に溶け込んで受け継がれてきた文化」であり、例えば「ヘラジカやトナカイの肉を使用する伝統料理は、猟師たちが狩りをして食材を手に入れる自然に優しいもので、狩猟民族の伝統や生活の維持にもつながっている」という。

 しかし、これに対して現状では伝統料理とサステナビリティの結びつきが十分に理解されていないとの考え。ハカラ氏は旅行会社に対して、「ツアーの中に1回でもいいので伝統料理の食事を組み込み、その付加価値を広めることに力を貸してほしい」と要望した。