JATA、新型コロナ対策室を設置、収束後の回復に向け準備

  • 2020年2月13日

(左から)池畑氏、越智氏  日本旅行業協会(JATA)は2月13日の定例記者会見で、今般の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、このほど対策室を設置するとともに、対策会議の開催を開始したことを明らかにした。感染に関する正確な情報の収集に努めるとともに、集約した情報を会員企業や一般向けにウェブサイトなどを介して発信し、収束後の海外・国内・訪日旅行のリカバリー策について検討を進める考え。対策室長は総務部調査役の池畑孝治氏が務める。

 会見では理事・事務局長の越智良典氏が、現在の旅行業界における影響について説明。訪日旅行では旅行会社が毎月45万人近い中国人旅行者の取扱機会を失う見込みであること、海外旅行では香港とマカオを含む中国全土にレベル2または3の感染症危険情報が発出されツアーが中止となっていることに加えて、国内旅行もバスツアーのキャンセルや風評被害の拡大などで旅行需要が冷え込んでいることを伝え、「業界全体に大きな影響が出ている」と述べるとともに「報道が加熱している期間の落ち込みは仕方がないこと」との見方を示した。

 越智氏は今回のケースにおいては、訪日旅行における中国人の影響力の拡大や、大型クルーズ船内での集団感染など、これまでには見られなかった要因や事象が見られることを指摘。一方で、2003年のSARSや09年の新型インフルエンザなどのケースを振り返りながら「需要の低減は一時的なもので、必ず潮目は変わる」との見方を示し、「キャンセル客を取り戻すためには冷静な対応が必要」と強調した。

 「冷静な対応」に向けては、日本人の感染状況を的確に把握するために、武漢やクルーズ船内など“国外”で感染した圧倒的多数の感染者と、国内で感染した4名のみを分けて考える必要性を指摘。累計の感染者数に惑わされずに、新規感染者数や退院者数の動きにも注視する必要があることを説き、会員企業やマスコミなどに理解と協力を求めた。

 今後については、SARSの収束後に大型キャンペーンで急速に観光客を取り戻した香港の例などをもとに、発生期から回復準備期、回復期へと続くフェーズごとに適切な対応を続ける考え。まずは日本政府も推奨する手洗いなどの基本的対策を呼びかけることで早期の収束をめざすとともに、武漢への救助便やクルーズ船による帰国者を除く、国内の新規感染者に関するデータなどを発信することで市場の過剰反応を抑える。修学旅行などについては09年の新型インフルの発生時と同様に、延期後の確実な実施をめざす。

 その後は観光庁や日本政府観光局(JNTO)などと協力して、東京五輪前に日本の安全性に関するメッセージを打ち出し、大規模なリカバリーキャンペーンを実施したい考え。今春のITBベルリンなどの国際的イベントも活用し、海外旅行の回復に向けては安心できる日本人旅行者を、訪日旅行の回復に向けては安心できる日本をアピールする「双方向のメッセージ」を発信する。越智氏は「日本が安心できる国であることを訴え続ける必要がある」と述べ、継続的な努力で市場の心理的な切り替えをはかる考えを示した。

 そして回復期には海外・国内旅行のリカバリーに努めるとともに、世界最大の海外旅行者数を誇る中国から、再び旅行者を獲得する。越智氏は、事態が収束した後に東京五輪を控える日本には、他国に比べてより大きなアドバンテージがあることを強調した。