ANA、来春以降も成羽デュアルハブ不変、成田第3滑走路に期待
ANAホールディングス(ANAHD)と全日空(NH)は12月13日に定例社長会見を開催し、ANAHD代表取締役社長の片野坂真哉氏とNH代表取締役社長の平子裕志氏が、来年の3月29日から開設する羽田発着国際線への期待などについて語った。NHと日本航空(JL)の2社は11月19日に、揃って新たな羽田路線の詳細について発表したが、NHは同日中には記者会見を開催せず、発表後では初めての社長会見となった。
冒頭の挨拶で平子氏は、新たな羽田路線について「新たに乗り入れる5都市を含む12路線を新規開設する。首都圏空港からの国際線をさらに拡充し、欧米長距離方面がより便利になる。また、豊富な国内線との接続を強化することで、お客様の利便性をさらに高める」と説明。一方で成田路線についても、今年の9月にパース線、10月にチェンナイ線を開設したこと、来年3月に開設予定のウラジオストク線を含めると2015年以降に9路線を新設し、積極的に路線網を拡大してきたことをアピールした。
その上で「日本発着のみならず、アジアと北米を往来するお客様の乗継拠点として、成長の柱として引き続きネットワークを拡充する」と語り、「羽田と成田の機能を活用したデュアルハブ戦略は今後も変わりはない」と強調。例えば今回の羽田/米国線の開設においては、サンノゼやシアトルなどの「セカンダリーシティ」への路線を成田から移行して日本各地から渡航需要の取り込みをはかる一方、米国の大都市への成田路線は維持しており「成田のネットワークに遜色はない」という。
片野坂氏も今後の成田の活用法については、記者からの質問に答える形で「羽田の発着枠拡張は当面、新しい滑走路を造らないことには難しいが、成田は第3滑走路の計画が動き出した。東京五輪のその先には成田の発着能力拡大が近づいており、我々は従来通りのデュアルハブ戦略を推進する」と強調。また、成田を拠点としていたバニラエアがピーチ・アビエーション(MM)と統合したことによっても、ANAグループにとって成田の重要性が増していることを伝え、「日本の旅客だけでなく訪日外国人の大きな玄関として、成田も活用して成長する」と主張した。
NHとして初めて就航地する5都市のうち4都市が欧州の都市となり、欧州路線が大きく強化されることについては平子氏が「今回のラグビーワールドカップ日本大会を見て、欧州や豪州のお客様の1人あたりの旅客支出が非常に大きいことが改めて分かった」と述べ、新路線の成功に期待。欧州の就航地が来夏ダイヤには一気に12都市にまで増えることについては、「北米や中国の就航都市数とほぼ同等になり、マーケットが“面”として広がる。アライアンスパートナーを模索しながら、面で売れるマーケティングを展開する」と語った。豪州については、羽田/ブリスベン線を開設するヴァージン・オーストラリア(VA)とのコードシェアによる、ネットワーク拡大に意欲を示した。
なお、JLが3月29日の夏ダイヤ開始と同時にすべての新たな羽田路線の運航を開始するのに対し、NHは開設・増便による14路線中の半分以上を「夏ダイヤ中に開設する予定」としているが、このことについて平子氏は「新路線を一気に立ち上げるのは難しい。現地の準備体制作りや運航乗務員の訓練のキャパシティの問題がある」と説明。少しずつ各路線の運航を開始する方針を示した。また、ロールスロイス製エンジン問題によって(関連記事)、運航に使用できない機材が2、3年前から大量に発生したことで「乗務員の移行訓練に大きな狂いが生じ、機種間で乗務員と機材のバランスが崩れた」とも伝え、「(十分な数の)運航乗務員はいるが、最大限に活用できていない」と現況を説明した。