航空旅行には「時間短縮」とイノベーションを-IATAの航空旅客調査

  • 2019年11月5日

IATA調査結果資料キャプチャ(ダウンロードリンクを記事下部に掲載)

 国際航空運送協会(IATA)はこのほど、「2019年グローバル旅客調査(2019 Global Passenger Survey)」の結果を発表した。世界の旅行者から航空輸送の満足度や期待を調査するもので、今回は14ヶ国語で166ヶ国の1万877人から回答を得た。全体的な満足度を10段階に分けて調査した結果は、7から10までの「満足」の割合は75%と18年と同じだったが、8から10までの「大変満足」の割合は49%から52%に上昇した。

 項目別を見ると、「予約」の77%が前年を下回ったものの、「決済」「チェックイン」「バゲージタグ」「バゲージドロップ」「セキュリティ」「出入国審査」「搭乗」「機内エンターテイメント」「機内サービス」「バゲージコレクション(受託手荷物の受け取り)」はプラスで推移。最も満足度が高かったのは決済とチェックインの78%、低かったのは機内エンターテイメントの62%だった。特に旅客の主要な関心事はセキュリティ、機内エンターテイメント、出入国審査、バゲージコレクションという結果となった。

スマホアプリが浸透、生体認証でパスポート代替も46%

 また、航空会社に対しては「イノベーションの活用」「シームレスな旅行」「受託手荷物管理プロセスの合理化」「遅延・欠航時の対応改善」「障がい者対応の必要性の認識」を求めている結果が出た。

 例えばイノベーションでは、スマートフォンでのオンラインチェックインが好まれる傾向が続いており、19年の利用率は51%と前年の47%から拡大。特に利用が多いのは北米で全体の65%。アジア太平洋も47%と半数に迫っている。また、航空会社のアプリの利用も広がっており、27%が航空会社のアプリで間際にアップグレードなど追加購入をすると回答した。航空会社からのフライト情報を受け取る手段でも、SMSの比率が下がる一方、アプリでの受け取りが増加。こうした傾向についてIATAは、スマートフォンを通して旅行の状況を把握し、管理したいと考える旅行者がますます増えていると分析している。

 また、生体認証関連では46%が紙のパスポートよりも便利だと回答しており、特に年間10回以上旅行をする35歳から44歳の男性からの支持が高かった。空港での手続きを素早く終えるためであれば、生体認証に必要な情報など追加の個人情報を提供することも気にしないと答えた回答者も70%に達した。時間短縮はバゲージドロップ、出入国審査、バゲージコレクションなど他の場面でも要望が高く、これらへの対応が「シームレスな旅行」として求められているかたちだ。

 ちなみに、辛抱できる待ち時間は、バゲージドロップでは3分以内が80% (18年は76%)、出入国審査は10分以内が79%(同75%)、バゲージコレクションは10分以内が74%(70%)など。このほか、空港での乗り継ぎについて「再度セキュリティチェックを受ける必要はない」「再度出入国審査を受ける必要はない」「荷物を受け取り、再度預ける必要はない」「荷物の乗り継ぎ情報をスマートフォンで受け取りたい」などの声が多く寄せられた。

手荷物に要望集まる

 「受託手荷物管理プロセスの合理化」では、自身で荷物の追跡が可能ならば手荷物を預けると回答したのが53%いたほか、46%は預けた手荷物が空港からさらにその先の目的地(ホテルなど)まで運んでほしいと要望。一方で、荷物をチェックインしない回答者に理由を聞くと、52%が「到着後に待ちたくない」と答え、そのほか「機内で必要なものがある(30%)」「規制されているものがある(27%)」「スーツケースが壊れる心配(26%)」が続いた。

 遅延・欠航の対策では、フライトスケジュールの変更などで旅程が混乱した経験がある旅客は全体の55%にのぼり、航空会社に求めることとしては「正確な情報のリアルタイム発信」が55%、「自動的なフライトの再予約」が53%などとなった。

 さらに、障がい者への対応については、調査結果において障がいを持つ回答者はすべての項目で健常者の満足度を下回った。特に低いのは機内エンターテイメント(58%)で、そのほかセキュリティチェック(61%)、出入国審査(62%)、荷物の受け取り(62%)となった。

 なお、調査では女性とミレニアム世代の意識調査も実施。女性は「個人情報を共有することになる生体認証に消極的」「機内で必要なものがあり、追加料金も払いたくないため荷物のチェックインはしない」「ゲートまでの時間や荷物の状況を知らせることは重要」との意見が見られた。ミレニアム世代では、「スマートフォンで支払いたい」「ビザや出入国のスタンプを集めたい」「機内WFiは重要」「旅行前に旅行先の必要な情報を伝えてほしい」などの声が多い結果となった。

▽IATA「2019 Global Passenger Survey」ハイライト(英語)
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