田川氏、「両利きの経営」を提案、新時代の法制も-JATA総会
日本旅行業協会(JATA)は6月24日、第63回の定時総会を開催した。冒頭で挨拶した会長の田川博己氏は、IT企業などの旅行業参入が続いている「これまでになく厳しい戦いの時代」を旅行会社が生き延びるためには、中核事業を深化すると同時にイノベーションを起こす「二兎を追う両利きの経営」が求められると主張。出席した会員企業に奮起を促した。“両利きの経営”については、米国の大学教授のチャールズ・A・オライリー氏とマイケル・L・タッシュマン氏の2016年の共著「両利きの経営 『二兎を追う』戦略が未来を切り拓く」の邦訳版が今年に入り発売されており、日本でも注目を集めている。
田川氏は「中核事業」については、常々強調している企画力・斡旋力・添乗力に基づく「送客」と「創客」の重要性を説明。一方で「イノベーション」に関しては、デジタル世代の若年層への対応が急務であることについて述べた上で「中核事業の知見を活かした新しいサービスを、私たちの手で提供できないか」と提案した。具体的には「地域を訪れた時の天候や気分によって、交通や宿泊だけでなく食事やエンターテイメント、ショッピングなどを自由に選べるようなサービス」をタビナカでも提供することを例示。あわせて「そのためには、法制度やルールは新しいデジタル時代に呼応して変わるべき」とも語った。
来賓として登壇した観光庁長官の田端浩氏は、今年の出国者数がゴールデンウィーク10連休の後押しなどもあり、5月までの累計で9%の伸びを示していることなどについて言及。その上で「出国者数は昨年の5.5%増になれば政府目標の2000万人を達成する。20年までではなく、是非1年前倒しで達成していただきたい」と述べた。具体的な取り組みとしては、国際線の新路線就航などを受けたデスティネーション開発や、青少年交流の活性化、地方発海外旅行の促進などに期待を示した。
終了時には内閣官房長官の菅義偉氏も来場し、旅行会社には改めて訪日外国人旅行者数の増加に向けた協力を求めた。また、今後は羽田や那覇で発着枠が増加することについて述べた上で、中部空港がグランドハンドリング能力の問題を理由に、中国からの週50便の乗入希望を断っていたことを地元の経済界から得た情報として披露。「全国を調べてみたら、合計で約150便を断っていた。皆さんには大変申し訳ないとあえてこの総会で申し上げる」と述べるとともに、「航空局には厳しく指摘した。国を挙げてこうした障害を全力で取り除くので、ご協力を賜りたい」と重ねて協力を呼びかけた。
3社の正会員除名を決議、会費未納で
総会ではそのほか、19年度の活動計画案などを承認。新規事業として、このほど設立した「国内旅行マーケットにおける新たな役割委員会」の活動や、観光による被災地支援パッケージの確立、大阪開催の「ツーリズムEXPOジャパン」における関西エリアの拡大や「IRゲーミングEXPO」の実施、税制改正要望における社員旅行の要件見直し、SDGsに関する業界内の環境整備などに取り組む。運営役員4人の新任についても決議した。
加えて、会費納入を怠った愛知県のイマジネーションプロジェクト、福岡県の光宝、宮崎県のTeleportersの3社の除名を決議。いずれも正会員の第3種旅行業者で、未納会費はそれぞれ17万7400円、18万1000円、17万6200円だった。