専門性で生き残る:海外マラソンツアーのマラソンネットワーク

企画から添乗までを独りで、今年は25本
バンクーバーやボストンで走り続ける柴田氏に聞く

-おすすめのマラソンツアーはありますか

柴田氏 柴田 バルセロナやストックホルムなど、ヨーロッパのマラソンツアーがおすすめです。当社はマラソンツアー専門の旅行会社ですが、マラソンはあくまでも「入口」と考えていて、ツアーでは観光を充実させることを重視しています。お客様も「マラソンだけや、観光だけのツアーでは物足りない」という方が多いです。

 私はほぼすべてのツアーに添乗するため、お客様とは長い時間を一緒に過ごします。その間には大抵、次の旅行先が話題に話題に上るので、「おすすめ」によって来年の予約が成立することがよくあります。かつて先輩に「添乗は営業だ」と言われましたが、まさにその通りです。

-そもそも、マラソンの魅力とは何でしょうか

柴田 私は1993年にバンクーバーマラソンのツアーを造るまで、マラソンとは無縁の生活を送っていましたが、商品造成のために走り始め、初めて大会に参加してその世界にハマりました。走っている最中は苦しいですが、ゴールした後の爽快感が何よりの魅力です。

 当社のお客様には学校の先生やIT企業の社員など、普段はデスクワークをしている方が多いです。本当は他のスポーツでも山登りでも、何でも良いのかもしれませんが、頭を使うことが多い方にこそ、汗をたっぷり流すマラソンにご参加いただきたいと思います。ストレス解消になりますし、走った後のビールも美味しいです。

-健康増進にも資するマラソンは、ツアーの素材としてかなり強力だと思いますが、外的要因によって業績を大きく左右されることはありますか

柴田 マラソンは爆発的なブームにはならないかもしれませんが、静かなブームが続き、今もその最中にあると思います。そのような状況のなかで、海外のマラソンツアーだけを扱う当社が恐れているのは、経済変動などではなく治安の悪化です。実際に、2001年の米国同時多発テロ事件があった際には大きな影響を受けました。

 13年にはボストンマラソンでも爆弾テロ事件がありました。しかしこの時は、当時のオバマ大統領がすぐに翌年の開催を宣言したため、ランナーの士気も上がり、当社のリピーターの方々も引き続き参加されています。

 近年については、良いことではありませんが、誰もがテロに慣れてしまったこともあり、ツアー参加者が極端に減ったことはありません。その背景には「必ずゴールする」「記録を出す」という目的意識の高いお客様が多いこともあると思います。

-今後の目標を教えてください

柴田 体力的な理由などで添乗が難しくなったら、手配だけを担当して、あとは現地のガイドに任せるスタイルに変えるかもしれません。しかしあと10年くらいは現在のスタイルを続けたいです。また、お客様が走れなくなってきたら、代わりにウォーキングツアーを催行するなど、形を変えながら事業を継続していきたいと思います。後継者については、10年先に候補者が現れているかもしれませんし、現時点では何とも言えません。

-ありがとうございました