旅行会社が描く今後のカスタマージャーニーは-経営フォーラム
環境変化を受け、旅行会社は戦略見直しの時
今後のタビマエ・ナカ・アト需要を捕えるには
日本旅行業協会(JATA)はこのほど、「JATA経営フォーラム2019」を開催した。分科会Dは「カスタマージャーニー(タビマエ・ナカ・アト)から考える新たな価値づくり」がテーマ。旅行業界を取り巻く環境の変化により、これまでのビジネスモデルではマーケットのニーズを捉えきれなくなるなか、新たな顧客層に向き合うにはプロダクトの差別化だけでなく顧客のライフタイムバリュー(取引期間を通じて企業にもたらす価値)を高める必要があるが、旅行会社はそのことについてどのような問題意識を持っているのか。そして今後、カスタマージャーニー(顧客が商品に接してから購入に至るまでの一連の過程)はいかにデザインすべきか。旅行会社の果たすべき役割を議論した分科会の詳細をお伝えする。
JTB総合研究所 コンサルティング事業部 コンサルティング第五部長 主席研究員 山下真輝氏
パネリスト
鶴雅リゾート 常務取締役 大西希氏
リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンター センター長 沢登次彦氏
トリップアドバイザー 代表取締役 牧野友衛氏
分科会ではまず、モデレーターを務めるJTB総合研究所の山下真輝氏が旅行業界の変遷について紹介。旅行のスタイルが多様化し、近年はOTAの台頭でさらに様変わりしていること、訪日外国人旅行者数が顕著に伸びていることなどについて述べ、一方では主要な旅行業者の取扱額は微減か微増にとどまり「旅行会社が儲かっていない現状」が浮き彫りになっていることを説明した。
その上で山下氏は、米国の経営学者であるフィリップ・コトラー氏が示したマーケティングの変遷について解説。同氏によればこれまでのマーケティング1.0、2.0、3.0はそれぞれ「生産主導」「顧客中心」「価値中心」と移り変わってきたが、現在のマーケティング4.0は「カスタマージャーニーの間中、ずっと顧客の道案内をすること」となり、そしてその主役は「新しいタイプの顧客」で、彼らはすでにマーケットの中心になりつつあるという。
また、彼らはデジタルネイティブである一方、友人や家族とのコミュニケーションを大事にする傾向も強いこと、企業側も従来の顧客関係管理(CRM)から顧客体験管理(CEM)を重視する時代に変化していることなどを説明。山下氏は「『認知』に始まり、『訴求』『調査』『行動』、そして『推奨』まで、果たして旅行業界は、トータルでカスタマージャーニーをデザインできているのかが大きなテーマ」と問題を提起した。