19年は新時代を迎える「挑む」年、大型イベントに期待も-年頭所感(1)

全国旅行業協会(ANTA)会長 二階俊博氏

 19年は平成の時代から、新たな時代を迎える記念すべき大きな節目の年だ。当協会は、2月15日に福島県郡山市で「第14回国内観光活性化フォーラムinふくしま」を開催する。イベントを成功させ、全国各地の観光資源の魅力を生かして国内観光の活性化につなげていきたい。

 国内観光では、昨年の自然災害で大きな被害を受けた地域が、一日も早く観光復興を実現するよう引き続き応援していく。観光庁や都道府県などの行政、旅行・観光関係団体と協力・連携して、全会員が一体となって国内旅行の需要喚起を通じた観光振興に努める。国際観光では、我々観光業界が先頭に立ち、さまざまな国・地域との双方向の交流を繰り返し、旅行需要の喚起のために奮起して取り組むことが何よりも重要だ。

 また、昨年の改正旅行業法や民泊新法の施行、今年の1月7日からの出国税の徴収開始、10月1日の消費税の増税など、さまざまな動きに対応して、旅行取引の適正化、旅行の安全確保と旅行者の利便の増進に万全を期していく。

 観光が明るくなれば、世の中は必ず明るくなる。今こそ観光に関わる行政と産業が一体となり、これまで培ってきた長年の経験と英知を結集して力を発揮し、観光産業の発展に努めたい。

日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)会長 大畑貴彦氏

 1月7日から27年ぶりに新しい税として出国税が導入された。この税収は(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、(2)日本の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、(3)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等、の3分野に活用される。また、この税による施策は(1)受益と負担の関係から負担者の納得が得られること、(2)先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること、(3)地方創生をはじめとする日本が直面する重要な政策課題に合致すること、の考え方を基本とすることになっている。

 国策としての観点から、インバウンドを主体とした税の使い道がほとんどであることは十分に理解しているが、インバウンド、アウトバウンド双方から税を徴収するという観点からは、アウトバウンド拡大に資する活用には今一つ負担者の理解が得られにくいと思う。業界の皆様とともに知恵を絞り、負担者からも納得が得られ、先進性が高く費用対効果が高い取り組みを熟考し、効果的な施策を打ち出し、それが現実的になるよう努力する覚悟だ。

 昨年は多くのテロや自然災害が世界各地で発生した。日本人の海外旅行者数は上向き傾向だが、より一層、お客様に安心・安全に旅行を楽しんでいただくためにランドオペレーターとして不断の努力を続けなければならない。そのためにも早急に業界全体で「安全情報共有プラットフォーム」の構築が必要で、それにはOTOA独自のネットワークの活用が不可欠であると確信している。

 海外旅行の推進については、昨年2月に設立されたJATAの「アウトバウンド促進協議会」に参加し、20年の日本人海外旅行者数2000万人達成をめざして活動している。今後この組織がより活発に活動し、効果的な施策を打ち出し、海外旅行がより大きく成長できればと思う。

日本外航客船協会(JOPA)会長 山口直彦氏

 この春元号が新しくなるが、振り返れば「クルーズ元年」と呼ばれる1989年は平成元年だった。「平成」の間、海外ではクルーズブランドの統合・系列化が進み、アジアで巨大企業が台頭した。船も巨大化し、「世界最大客船」は、30年前の7万トンから現在は20万トンを超えた。価値観の多様化、市場の世代交代に伴い、クルーズ商品の数、選択肢も飛躍的に拡大した。日本では17年の日本のクルーズ人口が31.5万人と初めて30万人を突破し、インバウンドでも寄港回数が2764回、訪日客も252.9万人といずれも過去最高を記録した。

 ここ数年、国内市場の拡大に貢献しているのが、外国船社による日本発着クルーズ。参入社数が増え、期間も長期化したほか、大型客船をチャーターする旅行会社が相次いだ。TV番組で日常的にクルーズ客船が取り上げられ、TVショッピングによる大量集客も実施されている。こうした積極果敢な取り組みは、クルーズ人口の底上げと新規市場の開拓に寄与すると期待している。

 日本船社の集客も好調に推移しており、「飛鳥II」は昨年3年ぶりとなる世界一周クルーズを一周コース乗客で完売し、「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2018」のグランプリと第1回国土交通大臣賞を受賞した。各社の企画クルーズも大変盛況だったと聞いている。日本船社は外国船社との棲み分けが進み、新たな時代を迎えている。

 03年から開始した「クルーズ・コンサルタント認定試験」の合格者数は、昨年までに7970人に達した。クルーズに精通した旅行会社の販売要員の育成は、市場の拡大、活性化に不可欠で、旅行会社による着実な集客とチャレンジングな商品づくりに繋がると確信している。1万人をめざし、引き続き人材育成に取り組みたい。

 一方で国際定期旅客船の利用者数は訪日韓国人旅行者に支えられて143.9万人となったが、過去5年間、日本人利用者数はピーク時の半分に満たない水準だ。近隣諸国との政治的・地政学的問題などもあるが、1日も早く関係改善が進み、東京五輪の年に就航予定の約500人乗りの「クイーンビートル」が起爆剤となり、国際人流で大きく貢献できる時代がやってくることを願う。

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