LCCやIT活用で海外旅行市場の活性化へ-ツーリズムEXPO
富裕層への取組強化、地方発海外旅行の促進を
IT時代に求められる旅行会社の変革
隣国への出国率改善でアウトバウンド市場の拡大へ
基調講演では、稲岡氏が日本人の出国率の低さについても言及。16年の出国率は14%で世界平均の18%より低く、そのなかでも隣国への出国率は世界の80%、韓国の83%に比べて、日本は57.8%とかなり低調であることを説明し、「これは大きな特徴」とコメント。そのうえで、日本の空港の海外就航都市数はまだ少ないとして、特に東アジアへの路線供給を増やすべきと訴えた。
また、地方の日本人出国率は9.5%と都市の19%に比べて低いため改善が重要である旨を語り、「地方の人たちが海外を見ないと、インバウンドによる地方創生もできない」と持論を展開した。
海外旅行に対するネガティブな意識を改善
基調講演の後には、「出国率向上に向けて何ができるか」をテーマにしたパネルディスカッションが開催された。アジアからヨーロッパへの送客を強化しているというミキ・ツーリスト代表取締役社長の檀原徹典氏は、韓国と台湾の海外旅行者数について報告。過去5年間を見ると、日本はほぼ横ばいで2017年は1789万人なのに対し、韓国は14%増の2650万人、台湾は8.8%増の1565万人に増加したという。
出国率では30代は韓国71%、台湾97%で、日本の21%を大きく上回っているところ。両国は隣国への渡航だけでなく、ヨーロッパなどロングホールのデスティネーションを訪れる旅行者も増加しているため、「ヨーロッパでの日本人のシェアが落ちている」という。
檀原氏は、日本人の出国率が伸びない理由として、安心・安全への過度な警戒心、遊びのために休暇を取ることに対する罪悪感を挙げ、「海外旅行に対してネガティブな意識が強い。これを改善すれば、1億人の人口を持つ日本のアウトバウンドはまだまだ伸びる」と話した。
韓国最大級の旅行会社であるハナツアー常務理事の權相鎬氏は、17年の韓国人の海外旅行について「2人に1人が海外旅行に行く時代になった」と報告。その要因として、働き方改革の浸透、メディアへの露出に加えてLCCネットワークの拡充を挙げた。現在の日韓路線における韓国系LCCの旅客数を見ると、韓国発と日本発の割合は9対1だとし、日本からの出国率を上げるためには日本の旅行会社がLCCをもっと活用すべきだと指摘した。
ただし、LCCはマーケットを拡大させるものの、ホールセラーとしては、価格がダイナミックに動くLCCの販売は「頭の痛い問題」と吐露。そのなかでも、「最後まで販促をかけて売る努力をしている」と語った。