LCCやIT活用で海外旅行市場の活性化へ-ツーリズムEXPO
富裕層への取組強化、地方発海外旅行の促進を
IT時代に求められる旅行会社の変革
旅行会社は思い切ったビジネスモデルの変革を
パネルディスカッションでは、モデレーターを務めた航空新聞社取締役編集長の石原義郎氏が、OTAが台頭するなかでのリアルエージェントの今後の取り組みについて問題提起。權氏は、競争は激しいという認識を示したうえで、IT投資を強化していることを説明。「新しいシステムの構築のために30億円を投資し、来年にはそれが完了する」ことを明らかにした。
檀原氏は自社でもオンラインでのBtoBのホテル販売が伸びていることを紹介し、「インバウンドでもアウトバウンドでもデジタルは欠かせない。リアルの旅行会社もそちらの方向に向かわないと駄目だろう」とコメント。オンライン化を進めるうえでの障害についても言及し、「システム投資をしても既存の事業を残したままなので、大きなビジネスモデルの変革にはつながらない。どの業界でもそうだが、それまでの事業を壊すくらいのことをしないと、新しいビジネスは生まれない」と持論を展開。自社も属する日本旅行業協会(JATA)についても「大きな方向転換をしないと大きなものを失うのではないか」と警鐘を鳴らした。
ANA総研の稲岡氏は、ANAセールスの社長を務めた経歴から、今後の旅行会社のあり方について言及し、「航空会社はIT技術やAIを活用してイールドマネージメント進めているため、昔のように旅行会社に座席をアロットしていくやり方はなくなるのではないか」と発言。「旅行会社は、仕入れた商品を年間通じて売っていくやり方を捨てるくらいの気持ちが必要ではないか」と付け加えた。
一方で、旅行会社の役割は引き続き大きいとの認識を示し、「旅行の醍醐味は行ったことのないところで新しい体験をすること。その商品づくりは旅行会社にしかできない。航空会社が新しい就航地に飛ばすときは、旅行会社の役割が特に重要になる」とコメント。大手OTAのようなITへの設備投資は難しいかもしれないとしながらも、「日本人海外旅行者3000万人に向けて、これからの旅行会社の取り組みも引き続き大切」と強調した。
最後に、石原氏は国土交通大臣の石井啓一氏がツーリズムEXPOジャパンの開会式で「観光先進国をめざすうえではインバウンドだけでなくアウトバウンドの拡大も重要」と発言したことを紹介。19年度の観光庁の概算要求ではアウトバウンド振興も含まれていることにも触れ、「かつてないほどアウトバウンドに追い風が吹いている。国がアウトバウンドに力を入れているなかで、旅行会社も今後の在り方を真剣に考える必要がある」と締めくくった。