トップインタビュー: DeNAトラベル代表取締役社長の大見周平氏
ウェブ企業の強みを生かしてユーザーを「ファン化」
主力の航空券販売を強化、新技術を積極的に活用
-18年の取り組みについてお聞かせください
大見 まずは、主力事業である航空券の販売を引き続き強化する。ただ、航空券販売は将来的には粗利が減っていくし、航空会社も直販に力を入れている。そのなかで商材を広げる努力も必要になるだろう。たとえば、ユーザーが旅行する際に付加価値を提供することも大切になる。そのためにアプリを活用するが、将来的には音声によるサービスも出てくるだろう。合わせて、新しいテクノロジーを使ったユーザーインターフェイスに対応する準備もおこないたい。
我々は「第3の軸」として、旅行会社とOTAのそれぞれの良さを合わせることに注力しているが、ウェブ企業としての強みを強化しなければ、戦いで勝ち切れない。ソフトウェアは人ありきなので、エンジニアの確保と、彼らが働きやすい環境整備が第一のポイントになってくる。
今年は昨年と同規模の投資を考えているが、将来を考えて既存の開発体制を強化することが大切と考えている。今年は、来年以降を見据えた土台作りに努める。まだ就任して4ヶ月なので、もう少し開発フローを見ながら、実際のプランに落とし込んでいきたい。
-「ウェブ企業としての強み」とは
大見 ウェブ企業の基本はユーザーと長く接点を持てること。そしてその接点のなかでデータを取得し、ユーザーに最適な情報提供や提案ができることだろう。
現在は旅行前に提供するサービスが多いが、これからは旅行中のサービスも増えていくだろう。ただ、現在の我々にとっては、航空券販売をはじめとする海外旅行において国民的なサービスになることが先で、旅行中のサービスへの取り組みはその後になる。
競争が厳しくなり、航空会社による直販化が進むなか、規模を拡大しながら、サプライヤーとの関係から利益を上げていくのがOTAとしての使命だ。規模の拡大において必要となるのがユーザーの「ファン化」で、数千円の違いで毎回違う旅行会社を選ぶことはないだろう。何度か使ってもらうと、その後も安心して使ってもらえるようになる。「ファン」を増やせば、利益確保はしやすくなる。
-OTAとリアルエージェントのメリットは、それぞれどこにあるとお考えですか
大見 買うものが明確であれば、接続時間や情報量で勝るOTAにメリットがあるのではないか。一方、リアルエージェントはニーズの明確ではないお客様がスタッフとコミュニケーションを取りながら旅程などを決めることができるので、旅行経験の浅い人にはメリットがある。ただ、OTAも最近はチャットボットやLINEなどを活用した接客サービスを進めているので、どこまでリアル店舗が重要なのかは、ユーザーによるだろう。
-人を介したサービスへの取り組みについては、どうお考えですか
大見 DeNAトラベルでは電話での問い合わせ窓口も設けており、そのまま購入に至るケースも多い。すべてをチャットに置き換えられるわけではないので、人を介したコミュニケーションも強化したい。また、緊急性の高いカスタマーサポートなどは、最終的に人が対応しなければいけない。テクノロジーを活用するという大きな流れはあるが、すべてを最新テクノロジーに置き換えるというのは、社内体制的にもニーズの面でも無理だと思う。
一方で、もちろんAIでカスタマーサポートを効率化する取り組みは始めている。今後、グローバルの旅行市場でのテクノロジーの活用の度合いは、チャット、音声、VRの順になるのではないか。チャットについては、LINEだけで予約が完結するサービスを提供する会社も現れてきている。チャットで消費する動きが日本でも本格的に始まるのではないか。