IRの経済効果や課題について専門家が説明-日本型IRセミナー
東京は2.2兆円、大阪は1.6兆円規模に
関連機関の連携がカギ
フィランダー教授「適正な法整備、税制の枠組みを」
ワシントン州立大学准教授のカウリン・フィランダー氏は、IRがもたらす経済効果について説明。直接的効果として雇用と支出、間接的効果としてサプライヤーやベンダーへの経済効果を挙げ、「日本の場合は、ほとんどのものを地元で調達できるため、地域にとっての経済効果も大きい」と述べたほか、誘発効果として雇用者による地域での支出を挙げた。
また、東京と大阪でのIRによる経済効果を試算。総生産高は東京で2兆2000万円、大阪で1兆6000万円、直接雇用創出は東京で3万4500人、大阪で2万6000人、間接雇用も含めると東京で10万3000人、大阪で7万7500人、税収は東京と大阪で合わせて8000億円になると報告した。また、訪日外国人市場への効果については、IRができることで訪日外国人が約400万人増え、そのうち約230万人は「IRがなければ訪日しなかった数」とし、消費額は1兆3000万円に上ると説明した。
その上で、フィランダー氏は「適正な法整備、特に税制の枠組みが必要」と主張。IRを誘致する都市については、交通アクセス、地域の観光素材、人口密度、ライセンス規制による限定的な競争環境が重要とした。
求められる政府・IR・地域の連携
セッション2のテーマは「反政府勢力の排除について」で、ネバダ大学ラスベガス校教授のジェニファー・ロバーツ氏は、ネバダ州の各種規制を紹介。IRのライセンス付与には適正かつ厳正な審査がおこなわれていること、違反者には厳しい罰則が設けられていること、運営者には厳しい審査の対象となっていること、公正なギャンブルのためにゲーム機のテスト検査が実施されていることを紹介した。また、ネバダ州ではギャンブルを管理する団体として「ゲーム・コミッション」があり、組織だった監視がおこなわれていることにも触れた。
ネバダ州の実例から、ロバーツ氏は日本型IRに対し、ライセンス付与には厳しい身元調査を実施し、第三者の監視機関を設けることを提言。さらに、IR運営者に対して厳しい規制をかけるとともに、自己規制を求める仕組みを構築することが大切とした。
企業戦略コンサルタントのヴィズワ・サダシヴァン氏は、シンガポールのこれまでの取り組みを紹介。「ギャンブルの要素を最小限にし、カジノ以外に楽しめるところを提供することで、家族で楽しめるリゾートとしてのIRをめざした」と話し、マリーナベイ・サンズを例として挙げるとともに、「とにかく、カジノの街だとは思われないようにすることに注力した」と付け加えた。
ギャンブルはマネーロンダリング、組織犯罪、テロの資金源などにつながる可能性もあることについてサダシヴァン氏は、「リスク管理とビジネスの成功のバランスを取るために、現実的なリスク管理が大切になる」とし、シンガポールでは政府による政策、IRによる自主規制、コミュニティによる教育の「トライアングル関係」を重視していると説明。シンガポールではカジノ規制機構(CRA)が明確な方針と規制をつくり、厳格な監視を実施しているほか、ギャンブル依存症対策協議会(NCPG)がギャンブル依存者を常に監視し、そのケアに当たるなど組織だった対応がなされていることも紹介した。