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欧米豪からの誘客強化で訪日消費8兆円へ-ツーリズムEXPO

広域連携などで成功へ
カギは日本らしさ、地域らしさ

高山市は特区通訳案内士を有効活用
しろうま荘、外国人の心つかむ体験を提供

高山市役所の丸山氏  シンポジウムでは、高山市役所海外戦略部長の丸山永二氏が登壇。高山市が「住みよい町は行きよい町」という基本理念をもとに、外国人旅行者の誘致に力を入れてきたことを説明するとともに、これまでに多言語案内板の設置、8言語のパンフレット、10言語の散策マップを作成したことなどを紹介した。また、特区制度を活用した飛騨地域限定の通訳案内士についても言及。16年に英語の通訳案内士として32人が働き始め、今年は1月から8月までの間に、すでに訪日旅行者1000人の案内を務めたという。

 高山市は、外国人訪問者数の上位10ヶ国のなかに欧米豪の5ヶ国が入り、逆に訪日旅行市場全体に占める割合が高い中国や韓国は10%にも満たないなど、欧米豪の取り込みに成功している。丸山氏は今後の課題としては「広域の連携ルートの推進」を挙げ、「欧米豪の旅行者は滞在日数が長く、行動範囲も広い。広域ルートをどのようにピーアールしていくかが大切」と指摘した。

 信州白馬八方温泉しろうま荘支配人の丸山俊郎氏は、「全18室の小さな旅館ながら、外国人向けのサービスを充実させることで宿泊者を増やしている」と紹介。丸山氏自身にオーストラリアへの留学経験があることから、そのネットワークを生かし、オーストラリアからの旅行者の取り込みに成功しているという。自社ウェブサイトは5ヶ国語で展開。貸し切り温泉や地酒テイスティングなど外国人が好む体験の提供が功を奏し、冬期は平均70%、平日に限れば90%の宿泊客が外国人という。

伝統文化と現代文化の融合
地域のストーリーに高い関心

フランス観光開発機構のマンテイ氏  欧米豪市場のニーズについての議論では、マンテイ氏は「日本は伝統と現代のバランスが取れている」と述べた上で、「その特徴に期待して日本を旅行先に選ぶ旅行者は多い」と評価した。一方で、「ニーズは国によっても違うし、各国内でもさまざま」と話し、「こうした特別なニーズを満たせるのは中小の旅行会社」との認識を示した。

 高山市の丸山氏は、欧米豪からの旅行者の間では「町の成り立ちなどのストーリーを知りたい」との需要が高いことについて述べ、「満足度を高めることが旅行者の取り込みに大切なこと。通訳案内士の役割は大きい」と発言。しろうま荘の丸山氏は、「アジアの旅行者は『立山の雪壁を見たい』など明確な目的を持っている。一方、欧米豪では複合的な魅力が受け入れられる」との考えを示した。