ドイツ、日本市場復活に向け取組強化-GTM2017

テロ発生も16年の外国人宿泊者数は増加
日本市場は「回復の兆し」

日本市場は1割減、サプライヤーは市場回復に向け投資

ドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長のケッテルハーケ氏  こうした状況のなか、16年の日本人宿泊数は11.8%減の106万9613泊と前年を下回った。国別の順位では17位を維持したが、00年には4.0%を占めていた全体におけるシェアは、昨年の1.5%からさらに0.2ポイント減少し、1.3%となった。

 ただし、GNTBアジア・オーストラリア地区統括局長(当時)のレイカート・ケッテルハーケ氏は、停滞する日本市場について「今年の1月から3月までの延べ宿泊数は10.8%増となり、ポジティブな動きを見せている」と説明。「日本人のパスポート保有率は25%とまだまだ低く、中長期では海外旅行需要を伸ばせる余地が多いにある」と語り、引き続き日本市場で消費者、旅行会社、メディアに対し、マーケティング活動を展開していくことを強調した。

オペラハウスで開催したオープニングセレモニーはワーグナーの曲で歓迎   具体的には、「ドイツがレジャー向けの観光地であることを改めて周知するため、メディア露出と旅行会社への新たな旅行素材の情報提供を徹底する」方針。ケッテルハーケ氏は、「ドイツを訪れる日本人の80%はリピーターだが、一部地域にしか訪れていない」と分析し、「市場刷新のために、新しい旅行素材やデスティネーションの開拓が不可欠」と訴えた。具体的には東部や北部が未開拓であること説明した上で、「東部の歴史的な街や、北部のファッショナブルなハンブルク、世界遺産のリューベックなどは日本人の嗜好に合う」とアピール。旅行会社と密にコミュニケーションを取ることで、新しい旅行商品の開発に協力する姿勢を示した。

民族衣装を着たバイエルンの音楽隊が参加者を出迎える演出も 日本人宿泊数がヨーロッパで伸び悩む原因はテロへの不安にあるが、ヘードルファー氏は「ドイツ政府は治安維持に向けて全力を注いでいる」と話すとともに、「ドイツはオープンで寛容な国であり、あらゆる国の観光客を心から歓迎する」とアピールした。なお、ドイツでは5月12日にテロを起こす危険がある人物をGPSで監視する法律が成立しており、テロ防止に向けた監視強化を着々と進めている。

ロマンチック街道のローテンベルク  GNTB東京支局ディレクター・マーケティング(※当時)の西山晃氏は「ローテンブルク、ロマンチック街道、マイセン磁器工房など、日本人が多いところは劇的に数字が落ちているので、需要回復に向けてキャンペーンなどへの投資をしていく姿勢を示している」と強調。「ドイツの観光ビジネスは粛々とおこなわれており、観光客が来るのを待っている。過剰反応しないで欲しい」と語った。


来年には15年並の回復を期待

プロジェクションマッピングで旧市庁舎にメッセージを描くサプライズ演出   GTM2017に参加した旅行会社によると、日本からのビジネス需要はすでに回復しており、レジャーについても問い合わせが増え、徐々にではあるが回復の兆しを見せているという。ツアーオペレーターからは「一度減らした宿泊施設などの仕入れを増やすのは厳しいが、個人も団体も今年の夏以降から徐々に回復し、来年にはテロが起こる前の15年の数値に戻るのでは」との見方を示す声もあった。ただし、人気のクリスマスマーケット需要については「すでに飽和状態で仕入れは厳しい。今後大きく伸ばすのは難しいのでは」という意見も聞かれた。

旧市庁舎の中庭でクリスマスマーケットを再現  こうした状況のもと、航空座席の確保の点で大きな影響を与えたのが、昨年のオーストリア航空(OS)の日本路線撤退に加え、ルフトハンザ航空(LH)が今夏の成田/フランクフルト線を運休したこと。これらにより、中欧での航空会社の組み合わせの選択肢がかつてより限られているのが現状だ。現在、LHは羽田乗り入れの際に成田線を残す「成田縛り」の例外として認められている状況にあるが、旅行会社からは「いずれは飛ばさなければいけないはず」と、成田線の運航再開を期待する声も挙がった。