週間ランキング、1位はKNT構造改革、JTB再統合との対比に注目

[総評] 今週1位は、4月27日に発表されたKNT-CTホールディングスの事業構造改革です。先々週にはジェイティービー(JTB)が事業再編を発表し、圧倒的な1位を獲得したばかりで、非常に大きな話題が続いています。

 KNT-CTの事業構造改革は「集中と分散」を基本方針として、従来の「個人と団体」という旅行形態別を軸とする構造を「地域」を軸に整理しなおすことが核となります。

 さかのぼると、旧近畿日本ツーリスト(KNT)とクラブツーリズム(CT)が経営統合したのが2013年1月1日で、その際に団体旅行の「近畿日本ツーリスト株式会社」、個人旅行の「近畿日本ツーリスト個人旅行株式会社」、店舗販売の「近畿日本ツーリスト個人旅行販売株式会社」が設立され、CTとともにKNT-CTホールディングスの下で事業を開始、その後は14年に個人旅行販売と個人旅行を合併して団体、個人、CTの3社体制となっていました。

 今回は、CTはそのままに団体と個人を会社分割し、地域ごとに旅行事業を展開する子会社群に機能を「分散」させる一方、管理部門や後方業務、仕入れなどは「集中」することになります。また、東京エリアのMICEと訪日旅行、WEB販売も専門会社を立ち上げます。

 おそらくこのニュースに触れた誰もが考えるであろうことは、JTBが2007年に分社化した地域会社を本社に再統合することを明かした2週間後に、KNTが地域に「分散」することを発表するという偶然についてです。見方によっては「JTBが試してダメだったこと」とも考えられますが、こういった決断に正解などあるはずもなく、時代や社風、競争環境などによっても変わるでしょうし、店舗の考え方もかなり大きな要素となるでしょう。

 そもそも機能と地域は布の縦糸と横糸のようなもので、どちらに軸足を置いても一長一短があるはずですから、JTBやKNTのような巨大な組織にとっては永遠の課題なのかもしれません。その意味では、両社がいつかまた逆の選択をしないとも限らず、まずは両社が新体制で本格的に営業を開始する来年までの準備期間に注目したいところです。

 ひとつ無礼を承知でいえば、次期社長の丸山隆司氏が就任3日後に69歳を迎えられる点はいささか気になります。例えば目まぐるしい勢いで進化するIT技術ひとつとっても、一般論としてそれを使いこなす、あるいはせめて理解するのに、若いほど有利であることはまず間違いありません。

 もちろん、最近は60代の後半に入られても矍鑠として若手を圧倒するようなバイタリティを持つ方も多く、なかにはエイチ・アイ・エス(HIS)の澤田秀雄氏のような異能の人物もいらっしゃるわけで、若手に任せるところは大胆に任せるといった決断をできれば経験が武器になる場面も多々あると思われます。また、旅行業のご経験がなくとも、むしろ外の目で改革を実現できる可能性もあります。

 とはいえ、はっきりいってKNTに限らず旅行会社、特に従来からの総合旅行会社の現状は「待ったなし」のはずです。このあたりのお考えについては、丸山氏が就任される6月以降に是非お話しをお聞きする機会を頂戴したいと願っております。(松本)

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