旅行業・観光業DX・IT化支援サービス

新春トップインタビュー:HIS代表取締役会長兼社長 澤田秀雄氏

「世界のHIS」へ
2020年めどに売上1兆円めざす

 エイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役社長に2016年11月1日、創業者である澤田秀雄氏が就任した。澤田氏の社長復帰は実に2004年以来のこと。この12年でHISグループの売上高は約2倍となったほか、利益も約3倍に増加。また、ハウステンボス(HTB)の立て直しやエネルギー、「変なホテル」など事業領域は旅行に留まらず、ますます精力的に拡大中だ。日本の旅行業界に変化をもたらした澤田氏がめざすところはどこなのか。組織改正のねらいや今後の展望とともに聞いた。


-11月に経営執行体制を変更され社長に戻られましたが、改めて意図などについてお教えください

澤田秀雄氏(以下、敬称略) 大きく2つあるが、1つ目は旅行産業だけでなくテーマパークやエネルギー、海外へのホテル展開、そして将来的にはロボット会社など色々な事業を展開するなかで、旅行業だけでは割り切れなくなった。幹部が旅行業のことだけしかわからないようではおかしくなってしまう。

 2つ目は、世界の情勢がどんどん変わってきている。今はインバウンドが増加する一方、アウトは大きくは増えていない。HISのメインは海外旅行だったが、少子化などさまざまな理由はあるものの、成長が止まり始めている。今回の組織改正は2桁成長を再びめざすために実施した。


-「脱旅行業」といったご発言もあったようですが、成長の牽引役は旅行業以外ということになるのでしょうか

澤田 世界的な旅行会社をめざそうということで完全に「脱」ではない。旅行だけでなくロボットやホテル、エネルギー、植物工場、この4大部門を5年後、10年後に旅行業と匹敵する大きな柱にするということだ。エネルギー販売だけでも来年は80億円、100億円という売上規模をめざしている。

 旅行業も2桁成長させる。そのためには、日本の旅行業界だけではなく、世界で勝ち抜こうという作戦に変わってくる。「日本のHIS」から「世界のHIS」に変わっていこうということ。そうすればマーケットは大きくなるし、まだまだ旅行業も成長力はある。

 とはいえ、将来的にロボットなどの新たな柱は利益では1つ1つが旅行業に匹敵するか、抜き始めるのではないか。あるいは、例えばホテルが100軒、200軒となれば、これだけで利益は200億円、400億円となり、今の旅行業を抜いてしまう。


-「世界のHIS」になるために欠けているところは何だとお考えですか

澤田 世界的な旅行会社になるには、ネットワークを使って、インターネットやスマホの販売で世界に打って出る。ネットワークについては、すでにタイやインドネシアやベトナムには何百人も従業員がいるわけだが、これをさらにアジア全域に広げていく。

 一方、従来のように店舗もやっていくが、同時にオンライン販売に力を注いでいかなければ時代に取り残される可能性がある。店舗は、世界では1000店ぐらいはいけると思う。ただし店舗数だけ増やすというよりも、インターネットやスマホで情報収集して申し込んでもいいが、店舗でも両方でやれるビジネスモデルでいきたい。

 今は店舗だけの総合旅行会社とOTAの2種類があるが、我々は両方でやっていきたい。インターネットで情報を収集して困ったら店舗に行く、といったニーズに対応できればお客様の便利度は増す。


-今のところ、リアルエージェントがOTAとして成功した例は皆無ではないでしょうか

澤田 リアルの旅行会社は固定観念に縛られる。OTAは若い人がやらなくては無理だろう。我々のような世代がやっていてはいけない。