週間ランキング、1位はJTB中間決算-「選ばれる」工夫を

[総評] 今週は、ジェイティービー(JTB)の2017年3月期中間決算の記事が1位になりました。営業利益から純利益まですべて前年比約6割の減少ということで、厳しい結果です。当然ながら海外旅行も国内旅行も市場が6割も縮小しているはずはなく、また例えば営業利益を見ても、昨年が2割増と好調だったとはいえその前の2014年の98億円と比べても4割減となる数字です。

 折しもエイチ・アイ・エス(HIS)では創業者である澤田秀雄氏が社長に復帰され、「総合旅行会社のビジネスモデルは古い」「JTBとの競争は終わった」と話されていたばかりですが、最王手であるJTBの業績と市場動向が乖離している事実は、否が応でも旅行業に忍び寄る危機の可能性を考えさせます。

 ただ、旅行業の危機といっても、それ自体は何年も言われ続けた新鮮味のないテーマで、日本旅行業協会(JATA)の会長が自ら「崖っぷち」と表現されたことすらあります。そしてその一方で、そんなことを言われ続けながら環境は激変せずなんとなく毎日が続いてきたというのが現状でしょう。

 日常が継続するというのは大変ありがたいことでそれに越したことはなく、個人的にも警鐘と実情がなかなか合致しない状況に、もしかするとこのままふわふわと時間が経過していくのかと考えたこともあります。しかし、当然ながら「永続」など望むべくもなく、変化は気付かないほど漫然と進んでいるかこれから突然来るかのどちらかであると想像されます。

 11月17日発表された「2016ユーキャン新語・流行語大賞」の候補に「民泊」が入りましたが、旅行業を取り巻く環境が変わっていく中で旅行業だけが変化をまぬがれることなどありえません。

 もちろん、旅行会社がなくなることもありえないでしょう。ゼロコミッションやオンラインへのシフトで先行する海外でもリアルエージェントへの回帰が起きている例があるようですし、必ずしも暗い未来ばかりではないはずです。

 とはいえ重要なのは、揺れ戻す時に、最初の状態を回復できるわけではないということです。「危機」のシナリオが現実のものとなった後に揺れ戻しがあったとしても、危機以前の旅行会社の需要規模をそのまま取り返せるとは考えられず、また、戻ってきた需要を享受できる会社の数も危機以前を下回ると考える方が自然です。

 そうであるとすれば重視すべきは、シンプルに「いかに選ばれるか」でしょう。

 いつもいつも勝手なことばかり偉そうに、とお思いかもしれませんが、トラベルビジョンの事業が成り立つためには、旅行会社のプレゼンスと販売力が不可欠です。旅行会社に頼ればお客様を送ってくれる、座席や空室を販売してくれる、とサプライヤーが考えなくなってしまえば、例えばこのウェブサイトで掲載しているバナーのような広告はなくなるわけで、トラベルビジョンにとっても死活問題です。

 広告の話が出たついでに「選ばれる」ことについてもう一度触れておくと、旅行会社の求人広告がトラベルビジョンを含めて色々な媒体で掲載されていますが、大変失礼ながら目を疑うような雇用条件が掲げられていることも少なくありません。

 例えば自分の子どもや親友が働く先として勧められる条件かどうか、勧められるのであればそのセールスポイントは今の書き方でしっかり伝わるのか、そういった部分の工夫が成果を左右するはずです。そして、優秀な人材を確保できれば会社の業績にも好影響をもたらし、もっといえば旅行業界の明るい未来につながっていくはずです。

 最後に一つ、自社の宣伝広告ですが、トラベルビジョンがLINEのスタンプを作りました(リンク)。すでに何十万というスタンプが販売されている中でありきたりのものを作ってもおもしろくありませんので、「GO SHOW」「NO SHOW」「COM」「ロスバゲ」など業界用語だらけにしてあります。絵も弊社社員が描いたもので手作り感が好評を頂戴しており、皆様もお気に召すようでしたらご利用いただけますと幸いです。(松本)

▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年11月11日0時~11月18日13時)
第1位
JTB、16年度上期は全利益が6割減-下期は仕入強化、FIT取込も(16/11/13)

第2位
パスポートに値下げ要望-行政レビュー、澤田社長も出席(16/11/13)

第3位
ANAHD、早くもローリングプラン策定へ、米大統領選など受け(16/11/15)

第4位
日本航空、成田/パリ線を運休、1月と2月に(16/11/13)

第5位
インタビュー:マリアナ政府観光局GMの一倉隆氏(16/11/15)

第6位
LHグ、新予約システムを訴求-OS復活は「需要次第」(16/11/14)

第7位
シンガポール航空、羽田線にA350-900投入、12月13日から(16/11/14)

第8位
日本航空、ホノルル/成田、関空線で臨時便、1月と2月に(16/11/15)

第9位
JATA、「韓国復活」で150名規模のファムツアー、12月に(16/11/13)

第10位
ジャパン・レール・パス、国内で試験販売、3月から(16/11/14)