「日本遺産」や国立公園で訪日客を地方に-ツーリズムEXPOより
文化財や自然を地方創生の鍵に
外国人目線で資源の磨き上げを
「よそ者視点」を刺激に
シーズンに偏らないツアー造成を
モデレーターを務めた松本大学名誉教授の佐藤博康氏は、現在の受入体制のまま、政府目標の達成に向けて旅行者数だけが急増することの問題点を指摘。地域の自然資源については「日本には四季があるからこそ、一時期に観光客が集中する。そのことで宿泊施設が予約できないなどの混乱が生じる可能性がある」と述べた。佐藤氏の意見を受けて、JTBグローバル&マーケティングトラベル西日本営業部で訪日団体客を取り扱うグレーベ・トーベン氏は「桜や祭りの時期はすでに日本人の観光客でいっぱい。海外から行こうとしても宿泊施設が確保できない」と語り、佐藤氏の懸念はすでに現実として起きていることを説明した。
岡本氏も、国立公園を抱える地域について「特定の地域に観光客が集中することによって、そのキャパシティを上回る恐れがある」との見方を示し、地域や時期の偏りを生み出さないための解決策として、通年で楽しめる体験プログラムや観光ガイドの提供体制の整備を挙げた。
同氏はシンポジウムを振り返り、「地域の人々はその地域の良さになかなか気付けない」と述べた上で、「外国人の視点という『究極のよそもの視点』で好評価をうけることは、地域の自信につながる」と強調。訪日客が地域活性化にもたらす好影響に期待を寄せた。
岡本氏の意見を受けた佐藤氏は、自らが審査委員を務めた今年の「ツアーグランプリ」の結果に言及し、特に国内部門の質が非常に高いと感じたことを説明。理由については「すでに国内の旅行業界で培われたノウハウに、インバウンドという刺激が加えられたことによるもの」と解説し、「外国人と意見を交わすことは、国内の観光産業にとって、観光資源の発見や利用の方法を学ぶことになる」と説いた。