持続可能な観光開発に向け取組強化-EXPOでリーダーズ・フォーラム
今年のテーマは「MICEとスポーツ」
今後の議論に向け「東京宣言」採択
9月22日から25日にかけて開催された「ツーリズムEXPOジャパン2016」では、23日に今年で2回目となる「アジア・ツーリズム・リーダーズ・フォーラム」が開催された。アジアのツーリズム産業のリーダーが集まり観光戦略などについて論じるフォーラムで、今年から3ヶ年のテーマとして「持続可能な観光開発~アジアが世界をリードする~」を設定。1年目となる今回は、20年の東京オリンピック開催を見据えて「MICE & Sports」をテーマとし、多くの有識者が議論を繰り広げた。フォーラム終了後には、持続可能な観光開発の方向性を盛り込んだ「東京宣言2016」も採択された。
フォーラムに先立ち挨拶に立った日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己氏は、「アジアは世界から注目されている。急成長するアジアの観光をいかに持続可能な産業にしていくかが大きなテーマ」とフォーラムの意義を説明。来賓の太平洋アジア観光協会(PATA)CEOのマリオ・ハーディー氏も、「19年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪を控える日本がMICEとスポーツで果たす役割は大きい。官民一体となった取り組みが求められる」と語った。今回は3部構成のフォーラムのうち、1部と2部のセッションを中心に紹介する。
パネリスト
JTBコミュニケーションデザイン常務取締役 大塚雅樹氏
ビジット・シアトル代表取締役&CEO トム・ノーウォーク氏
マカオ政府観光局局長 マリア・ヘレナ・デ・セナ・フェルナンデス氏
BBCワールドニュース「ザ・トラベルショー」 プレゼンター カルメン・ロバーツ氏
MICEで地方創生へ、各国が事例を紹介
第1部はMICEをテーマに議論がおこなわれた。冒頭で来賓として挨拶した国土交通大臣政務官の藤井比早之氏は、「年間訪日外国人旅行者数4000万人、6000万人をめざすなかで、MICEは重要なテーマ。国としても目標達成のために政策パッケージを進め、民間と地方の 連携を深めたい」と語り、地方創生におけるMICEの重要性を指摘した。
パネリストのプレゼンテーションでは、JTBの大塚氏が自社の取り組みについて説明。同氏はインセンティブ旅行のイベントにおける持続可能な運営のためのキーワードとして「経済的価値」「環境的価値」「社会的価値」を挙げるとともに、目的の実現と環境への配慮を両立するPDCAサイクルが必要である旨を主張した。
ビジット・シアトルのノーウォーク氏は、MICEの誘致に向けて21年までに100億米ドル超を投資し、「影響力のあるMICEデスティネーション」をめざす計画を紹介。路面電車の延伸やシアトル国際空港の拡張などについて説明したほか、20年にはワシントン州コンベンションセンターの姉妹施設として、新たなコンベンションセンターが完成することにも触れた。
マカオのフェルナンデス氏は、マカオ政府が5ヶ年計画でカジノ目的以外の観光客を増やす取り組みを進めていることを紹介し、「MICEは重要なテーマ」と強調した。また、16年上期のマカオにおけるMICEのイベント開催実績は628回で、参加者は58万8000人だったことを伝えた上で、「企業や政府関連のミーティングが多いが、全体としてまだMICEの数は少ない」と語った。