持続可能な観光開発に向け取組強化-EXPOでリーダーズ・フォーラム

今年のテーマは「MICEとスポーツ」
今後の議論に向け「東京宣言」採択

「持続的なMICE」に向け議論
ソーシャルメディアの活用も

マカオ政府観光局のフェルナンデス氏  ディスカッションでは、登壇者が持続可能な観光に関する課題について議論した。大塚氏とフェルナンデス氏は、観光と環境の関わりについて「地域や主催者の理解を深めることが重要」と指摘。ノーウォーク氏は「企業の社会的責任が求められている」と述べ、受入側もそれに応える準備が必要であると主張した。

 近年増加しているMICEにおけるソーシャルメディアの活用については、特に若者を国際会議に呼び込むためのツールになるとの見解で一致。一方でフェルナンデス氏は「対面でのコミュニケーションの代わりになるものではない」と述べ、 活用方法に工夫が必要との見方を示した。

 このほか東京五輪に向けては、大塚氏が「環境への配慮を重視しながら、いかに社会的レガシーを残していくかがカギになる」と発言。ノーウォーク氏は「地方へ訪日旅行者を拡散させることが大切。そのことを継続できれば市場はさらに拡大する」との見解を示した。フェルナンデス氏は「ステークホルダーのコミュニケーションが大切」との見方を示し、「何のために五輪をするのか、長期的な視点が求められるのではないか」とコメントした。


第2部「スポーツ 持続可能な発展には地域との協力と社会的貢献が不可欠」

パネリスト
スポーツ庁スポーツ統括官 平井明成氏
内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会・推進本部事務局・企画推進統括官 岡西康博氏
タイ観光スポーツ大臣 コープガーン・ワッタナワラーングーン氏
YTLホテルズ・エグゼクティブ・ディレクター ダトー・マーク・ヨー・シオック・カー氏
近畿日本ツーリスト代表取締役社長 田ヶ原聡氏

モデレーター
国際観光学研究センター副センター長、和歌山大学特別主幹教授、サリー大学教授 グレアム・ミラー氏

東京五輪に向け、持続可能なスポーツツーリズムを

スポーツ庁の平井氏はパネリストとしても参加  第2部の冒頭で挨拶に立ったスポーツ庁の平井氏は、「19年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪を好機と捉えて日本のスポーツツーリズムを盛り上げ、持続可能な観光テーマとしていきたい」と強調。「スポーツという観点から新しい観光資源が生まれる」との考えを示し、地域のスポーツコミュニティーの支援にも注力する考えを示した。

内閣官房の岡西氏  プレゼンテーションでは、内閣官房の岡西氏が東京五輪とともにパラリンピックを強化する方針を説明。「過去最高のパラリンピックにできるよう国民の意識を高め、取り組みを通じて日本をダイバーシティ社会にする」と政府の考えを示し、「世界最高水準のアクセシビリティとユニバーサルデザインの推進に注力する」と語った。また、持続可能なスポーツイベントをめざす上で、競技力の向上や競技人口の拡大、地方へのスポーツ大会の誘致なども重視する旨を強調した。

タイのワッタナワラーングーン氏  タイのワッタナワラーングーン氏は、スポーツツーリズムを重視する姿勢を強調。国際的なスポーツ大会や練習キャンプの誘致に力を入れることで、「スポーツハブデスティネーションをめざす」とした。このほか、17年の日タイ外交樹立130周年を記念して、アユタヤで「KIZUNA駅伝」を開催することを紹介。「スポーツツーリズムは交流によって真の友情を作り出すもの」と、その意義を主張した。

YTLホテルズのカー氏  北海道のニセコでリゾート施設を展開するYTLホテルズのカー氏は「旅行者には単なる宿泊だけでなく、スキーやアウトドアなどの体験を提供している」と強調。今夏にはMICE向けの体験プログラム「PURE」を開始したほか、訪日外国人旅行者向けにスキースクールも立ち上げ、 スポーツツーリズムに力を入れていることを説明した。また、札幌市 による2026年冬季五輪の招致活動もサポートする考えも示した。

 近畿日本ツーリストの田ヶ原氏は、スポーツツーリズムに必要な要素として、「自治体や企業の協力」「地元住民の理解と参加」「参加者を飽きさせないコンセプトや企画・運営」「継続性のあるコンテンツ需要」を挙げた。自社の取組事例としては、「東京マラソン・フレンドシップラン」「伊勢志摩サイクリングフェスティバル」などを紹介。東京マラソン・フレンドシップランでは、外国人ランナーと日本人ランナーの交流の機会ができることを特色として挙げ、伊勢志摩サイクリングフェスティバルについては、観光との組み合わせてで地元への経済効果が大きいことを強調した。