イスタンブール空港で自爆テロ、日本線は早期再開へ

  • 2016年6月29日

 トルコ・イスタンブールのアタテュルク国際空港で現地時間の6月28日午後10時過ぎ、イスラム教過激派組織ISILの関与が疑われる自爆テロが発生した。発生場所は国際線到着ロビー付近で、現地からの報道によれば銃撃戦も発生し、死亡者36名に加えて多数の負傷者が出たという。今回の事件の発生を受けて外務省は、日本時間の29日午前にスポット情報を発出。旅行者に改めて注意を呼びかけている。外務省などによれば、現在までに邦人の被害情報はない。

 大手旅行会社の対応については、各社が早期に旅行者の安否確認を終了。ジェイティービー(JTB)、KNT-CTホールディングス、阪急交通社、エイチ・アイ・エス(HIS)、日本旅行は本誌の取材に対し、トルコを訪問または経由するツアーの客の被害はなかったことを説明した。今後は各社ともに、現地や外務省などから情報を収集し、対応を検討する考え。6月30日出発以降で、催行中止や取消料免除を決定したツアーはなかった。

 ジェイティービー(JTB)によれば、近年トルコで相次いでいるテロ事件により、同国への旅行需要は大きく減退。「ツアーは設定しているが、今週の出発を予定していたパッケージツアーで催行が決定しているものはない」状況だという。他社についても、KNTとHISは事件発生時にトルコ国内に旅行者がいたが、日本旅行や阪急交通社についてはいなかった。

 ミキ・ツーリストによれば、トルコはテロや政情不安などにより旅行者の減少が続いており、主要な顧客であるシニア層も「昨年からストップ」している状態。結果的に、今回の事件による旅行者のキャンセルなどは少ない見込みだ。29日午後の時点では、利用する航空会社をターキッシュエアラインズ(TK)から別の航空会社に変更して旅行を実施したいという要望や、7月にトルコを訪問する団体などから計画の変更を検討する動きが出ているという。

 イスタンブール/成田、関空線を運航するTKは、29日の日本路線の全便を欠航。利用者数などの具体的な影響については明らかにしなかった。TKによると同空港は日本時間の29日正午過ぎには通常のオペレーションを再開。日本線以外では、すでに運航を再開している便もあるという。明日以降の便についてはキャンセルなどの問い合わせが複数あるものの「大きな影響は出ていない」と回答。30日からは日本線を含む全路線で運航を再開するという。

 TKは今回の事件を受け、6月28日から30日までのイスタンブール発着の全便を対象に、日程や経路の変更を手数料なしで受け付ける。有効期間は7月31日まで無料で延長可能に。未使用の航空券は払い戻し可能で、一部区間などを使用済みの場合は、未使用分の運賃額を算出して払い戻す。旅行会社へは個別に対応するという。

 イスタンブールでは今年1月、代表的な観光地のブルーモスクの付近で、ISILによるものと見られる爆発が発生し、外国人旅行者12人が死亡。日本人死傷者はなかったものの、旅行会社各社は直後のツアーの出発を見合わせるなど、各種の対応をとった。また、3月にも新市街の中心部で爆発が発生し、外国人4人が死亡。6月には旧市街で、クルド系武装組織が機動隊車両に対して車両爆弾攻撃をおこない、10名以上が死亡した。外務省は現在、同市についてはレベル1の注意喚起を発出している。

 相次ぐテロ事件の発生などにより、トルコへの日本人旅行者数は13年以降減少を続けており、15年は前年比38.5%減の10万4847万人に。今年の1月から5月までの累計は、55.1%減の2万527万人に落ち込んでいる。全世界からの旅行者数については、15年は1.6%減の3624万4632人、今年の1月から5月までの累計は22.9%減の830万1933人。トルコ大使館文化広報参事官室は本誌の取材に対し、「観光地の魅力や安全が損なわれているわけではない」とコメントし、今後もプロモーションを継続する方針を示した。